ハリーとの遭遇

さてそれから約5半年経った。まだ聖一と再会はできていない。ちゃんと会える運命にするとか言ってたけど大丈夫かなー。あの神様どうも頼りなくって。

私の名前はリン・チャンドラーと言うらしい。そこそこの金持ちの家で、と言っても家政婦なんていないよ、3歳くらいまではベビーシッターが来てたけど。こちらでの父は化学薬品会社に勤めており、母は大学で元は機械工学をやっていたが、最近はコンピューターの研究に移ったらしい。時代的にパソコンにはしばらく触れられないと思っていたから思わぬ収穫だ。

さてとある春の休日、そう言うと桜の花を見たくなるのは私が元日本人だからだろうか、さっきBBCで皇居外堀の桜の中継が流れていたせいかもしれないが、外はうららかな春には程遠いどんよりした空気だ。

「・・・じゃあガス会社には・・・」 「ねぇママ、引越しってなぁに?」

そう、最近研究分野が変わった関係で引越しをする事になったらしい。で、まさかいきなり何処に?と聞くわけにもいかないからまずは引越しが何かを聞いたわけだ。一生懸命説明してくれる父と母。ごめん、あたいそれ知ってるんだ。

というわけで近くにあった地図を持って行き椅子に登って、ドン!と机に置いて今の自宅を指しながらこう聞いた。

「じゃあ何処に行くの?」
「サリー州の、ええっとブラックネルとアスコットの間の、マルチンハーソン駅の南のウィッチウッドアベニュー沿いの・・・ここよ。」
ページをめくりながら教えてくれた。

サリー州とはロンドンの南西にあり、問題のマルチンハーソンはロンドンの西南西、ポーツマス、サウザンプトンの北西、オックスフォードの南東に位置する。ちなみにアスコットとはかの有名なアスコット競技場のあるところである。

・・・ん?ちょっと待てよ?サリー州といえばハリーポッターが住む叔父の家があったよな・・・って、あ・・・。

プリベット通りはマルチンハーソン駅を挟んでちょうど反対に位置し、700 mくらい、徒歩にして8分くらいの距離にある。

(家が近い!て事は小学校一緒になるのか、想定外の遭遇の早さだな・・・)