9と3/4番線からの旅

さて、入学の日がやってきた。今日もウォーキングをするべく、外にでた。ホグワーツに行くからしばらく出来なくなるだろう。

先週お尻に尻尾を生やされてからダドリー達はウォーキングには来てない。

「ダドリーさんのとこに顔を見せに行くんじゃなかったの?」
「はいはい」
先に出ていた母が急かしている。てくてくと歩き出した。

ダーズリー宅につき、ダドリーパパが出てきた。

「おはよう御座います、バーノンさん。」
「リンか。しばらくぶりだな。どうもうちの、あー、ハリーと学校が同じらしいじゃないか。」
「ええ、驚きました。ところでその学校から説明に来た人と一悶着あったようですが、ダドリーの具合はどうですか?なんでも尻尾を生やされたとか?」
「知っとったんかい。」
「私の元に集まらない情報はあんまりないですから。」

というと、苦虫を潰したような顔になる。まああの件を忘れられるわけもないか。

「見せていただけませんか?治せるかも知れないですし。」
「構わんが・・・、ダドリーや、こっちまでおいで。」

みると確かにダドリーから尻尾が生えてる。笑いこけそうになったが、ポーカーフェースで隠しながら観察した。

(ハグリッドって杖を折られて、傘の中に隠していたんだよね?それでこんなに上手く長持ちする魔法がかけられるの?)

これはハグリッドそこそこ頭良かった説あるか?なんて思ったが、そんな場合ではない。

杖を使って変身術を解くのは簡単だが、魔法陣を書くほうが確実だろう。

「多分治せると思いますよ。なるべく綺麗で折れ目のないA4の紙と万年筆はありますか?」
「何をする気だ?」
「魔法陣を書きます。それが最も事故の可能性なく安全ですから。」
「分った」

魔法陣は別に1分あれば書けるのだが、あえて2分かけて丁寧に書く。

「ダドリー、そこへうつ伏せになってくれる?」
「なんd」
「そのほうがやりやすいから」
「わかったよ、こうか?」
「うん。じゃあイメージして、尻尾が取れて外で遊んでいる自分を。」
そう言いながらダドリーに触れる。本人に触れていたほうが魔法はかけやすい。
「さぁ始めるよ。3、2、1、はい!」

尻尾が無事に消えた。

私がダドリーに話しかけるより先にバーノンおじさんが飛びかかって抱き合ってた。そりゃ、いきなりどこの誰かわからんやつに変身させられたら、いろいろ思うところはあるだろう。おや、ペチュニアおばさんまで乱入した。

ふと後ろを見ると母がのんびり紅茶を飲んでいた。だめだ、これ今日の仕事サボる気だ。

しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻したようでお礼を言ってきた。

「感謝する、リン。」
「いえいえ、大したことはしてないですよ。」
「いいや、本当は今日駄目元で市街まで出て医者に見せようかと思っとったんだ。手間が省けた。さて、何かお返しをするのが対等な立場というもんだろう、何がいい?」
「おや、こんな子どもと対等な立場だなんて、高評価に驚きを隠せませんね・・・。そうですね〜・・・。」

そういう展開になるとは思っていなかったので、何を言うか迷ったが。

「では2つ。どちらも簡単ですから。」
「ほう。それは?」
「ひとつはたまに母の話し相手になってやってください。極稀にうつ気味になるので。もうひとつはとある会社との業務提携を検討してみてください。検討だけでいいですから。」
「その会社とは?」
「まあ後で手紙をだしますよ、ただ、フクロウ便になると思いますがご容赦くださいね。ところで一体いつになったらハリーはその物陰から出てくるんですか?」

そう、ずっと廊下にいるのである。

「うわ、ばれてた?」
「あたりまえです、ダドリーですら気がついてますよ。全く私があなたと話せる日を一週間も恋い焦がれてお待ちしていましたのに。」

・・・

「リン、この小僧の事が」
「そんなわけないじゃないです、冗談ですよ。」

ふぅ、とため息をつくバーノンおじさん。ハリーはというとなんか疲れた顔をしている。

「だいたい私には好きな人がいますし。」
「えっ!?」

なんかやたら驚かれた。母まで驚いて手が止まっている。ハリーは、告白されてもずっと断ってるから興味ないのかと思ってたとかブツブツ失礼なことを言っている。

「たぶんみんな知ってますよ、テレビで小学生探偵としてもてはやされてる、サンクチュアリー・トンクスですよ。事件現場で一緒になったことがありまして。」

いやいや、ちょっと待って、とは我が母の言いよう。おう、どうしたんや?

「リンにもついに初恋が!?」

おう、そっちかい。なんて思いながら。

「そうですね。一目惚れでした。ああ、ところでその話を聞いて思い出した。ハリー、今日どうやってキングズ・クロス駅まで行くつもり?」
「うーん、おじさんに送ってもらえるように昨日お願いして、ダドリーを治すついでだからって言われたんだけど。」
「私が治してしまったからおじゃんになった、と。なるほど。では私と一緒に行きましょう。ハリーならまあ一緒でもサンクも文句を言わないでしょう。」
「ありがとう・・・ってあれ、サンクって?まさかさっき話してた・・・」
「そうよ、彼もホグワーツだし。で、ということで構いませんか?バーノンさん?」
「え、あぁ。こぞ・・・ハリーを連れて行かなくて済むのは助かるが、どうやって行くつもりだ?」
「電車で。というわけでハリー、きっちり2時間後に駅で待ち合わせましょう。私より後に来たら後で何がおごってもらうからね。」
「ええっ!?うーん、分かったよ・・・。」

という感じで家に戻り支度をして、母とお別れして、5分前に着くように駅に向かった。

「お待たせ、待った?」
「30分くらい。」
「そういう時は、そんなに、って言うものよ。ていうか早すぎない?」
「追い出された。」
「はぁ、なんというか薄情というか・・・。まあいいわ、電車が遅れると嫌だし、さっさと乗りましょう。」

電車に乗ってしばらくしてハリーが聞いてきた。
「ねぇ、9と3/4番線なんてあるの?」
「ありますよ。ある種の空間を拡張する魔法がかかっているそうです。そもそも、だってその魔法がかかっていますし。使えるようになってみたいですね、そんな魔法。」