第一の課題

いよいよ出番が来た。とりあえずハリーとアリスのおかげで人形を呼び出すのは問題ないらしい。これなら楽にクリア出来そうだ。
ホイッスルが聞こえたので競技場に向かう。緊張?それは楽しむものでしょ?
目の前の洞窟を抜けるとドラゴンが見える。大小様々な岩でデコボコした地形だ。

競技場を囲むように円形に観客席がある。昨晩会場に潜入したときと変わっていないようでひとまず安心だ。

「アクシオ、ドールズ!アクシオ、ピアノ! ー人形たちよ、ピアノよ、来い!」

ドラゴンは威嚇しながらも中央に留まっているので、その隙に、競技場外に待機させていたドールズを呼び寄せ呪文で呼び出す。
魔法で呼び出すのは、武器は杖一本だけということを考えて難癖を付けられないようにするためだ。

15秒もせずにピアノと人形達がくる。なんでピアノに乗っかってるんだ、人形達よ・・・。

呼び寄せたのは、有希・尚也と、かなちゃんだ。たとえ前世でこんな事態になっても彼らを真っ先に呼ぶだろうし。

「有希と尚也は近くで陽動を、かなちゃんは遠距離からいつも通りよろしく」

指示を終えたので次はピアノの設置だ。幸い平らな岩があったから、整地しなくてすむ。

「アビジェンディス(Abigendis)! ー追い払い!、インパーピアス! ー防水・防火、アエスチーユス! -耐熱せよ、ソーラス! ー響け!、プロテゴ トタラム ー万全の守り」

そうこうしてるうちにも、人形たちは攻撃を開始している。
かなちゃんはちょこちょこ飛び回りながら麻酔針を連射してる。
やたら明るくなったり暗くなったりとチラついて見えるのは、有希と尚也の仕業だ。

ある種の催眠効果を今回は狙うので、相手の脳の正常な動作を奪うのが先決だ。

「ヌーベス スパラグント!(Nubes spargunt) 雲よ展開せよ!」

あたりが暗くなる。多少暗いほうが、催眠効果が得られやすい。
今回は雨が降るとドラゴンが暴れかねないのでちゃんと強さは調整する。

しかし流石ドラゴン、この程度ではピクリとも動かない。

ここからが本番だ。

「ギュデート・イトゥムプパ! -踊れ、石人形!、ドゥコアオルビス(Duco a orbis)! ー円を描け!」

周囲の岩が次々大人ほどの大きさの石人形に変身しドラゴンの周りを円を描くようにグルグル回る。
ドラゴンが放つ炎で幾つか崩れ落ちるが生産の方がはるかに上回ってる。この間も人形達の攻撃は継続中だ。十分溜まって来たところでフェーズ3だ。

「フェーラ! ー巻け!、メタモロフォシス スチール(Metamorphosis Steel)! ー鋼になれ!、インペディメンタ! ー妨害せよ!、ステューピファイ! ー麻痺せよ!、アトミック フレア(Atomic Flare)! ー太陽面爆発!」

空中に出現したロープがドラゴンに巻きつき、即座に鋼へと変身する。
妨害呪文と失神呪文が鋼を駆け巡り、鋼の輪をガイドラインに巨大な炎の渦がドラゴンを取り囲む。いわゆる、「火を以って火を制す」というやつだ。人形達も一斉に失神呪文を放つ。

ドラゴンが炎を放つがますます取り囲む火が強くなるだけだ。苛立ちが見える。ここまで来たらフェーズ4だ。

「ルーモス! ー光よ、ノックス! ー闇よ、ピエルトータム ロコモーター! ーすべての石人形よ動け」

人形達に合図を送ると、有希は認識障害魔法でドラゴンに卵の位置を錯覚させ、尚也はフィールドの整地、かなちゃんは鋼の輪を浮遊呪文で少しずつピアノに近づける。
私はピアノで曲を演奏する。曲名は「天空の夜明け」だ。

ドラゴンは炎やら失神呪文やらがついた鋼の輪や、石人形が後ろから迫ってくるので知らず知らずのうちに卵から離れていく。ただ、ここで誤算が発生する。

「いや、なんで寝だしたし。」

そう、ピアノの音で何故かドラゴンが寝だした。
個人的には怒りを増長させて錯乱し、失神呪文が効いてくれるというのを狙っていたのだが、嬉しい誤算だ。
何なの、「天空の夜明け」が気に入っちゃったの?ともかくフェーズ5だ。

「ディセンド! ー落ちろ!、フィニート! ー終われ!、インペディメンタ! ー妨害せよ!、エンゴージオ! -肥大せよ!、エムイベート! -鎖になれ!、ステューピファイ! ー麻痺せよ!」

まず鋼の輪を地面に落とし、炎の渦を消す。次に石人形を大きくしてさらに鎖にする。最後にドラゴンの目を狙って失神呪文を放つ。有希に加え尚也も失神呪文を放つ。ようやく失神呪文の効果が現れだし、音楽が止んだときに動こうとしたものの、動きが非常にゆっくりだ。卵を取るなら今か。
かなちゃんにリンクし、私自身に浮遊呪文をかけて卵のところまで移動する。デコボコのところを歩きたくないし。

無事に卵をとったところで、集中力が切れ会場の歓声がうるさいほどに聞こえ出す。

「やりました! ミス・リン! 変身術と音楽を用いて巧みにドラゴンを撹乱して見事卵を手に入れました!」

しかしそんな事に構っている暇はない、とても疲れた。
とりあえず人形達を呼び出し、有希にピアノの輸送を頼みつつ、私自身にも浮遊呪文をかけてもらい、救護所に向かう。
流石に使った魔法の数が多すぎる、しばらく動きたくない。

救護所につき、マダム・ポンフリーから回復薬をもらい、飲み干す。
そこにマクゴナガル先生と、先に競技を終えたクラム・ハリー・アリス・ロン・ハーマイオニー・ジニーそして何故かジョージとフレッドが来た。

「ミス・リン、ミス・マーガトロイドもそうですが、あなた達が、こんなにも変身術が得意だったとは知りませんでした。
グリフィンドールの選手が2人とも見事に卵を取る事に成功する事が出来た事を誇りに思いますよ。ああ、それより怪我したところはありませんか?」
「ありがとうごさいます、怪我は大丈夫ですが、とにかく寝たいです。」
「まあ無理もないでしょう。点数が出たらゆっくりとお休みなさい。」

といって救護所を出ていく。次の瞬間。

「凄かったわ、あの大きな火の渦は何?」
「あれは最高だぜ、なあ?」
「ああ!すげぇワクワクしたぜ!」
「それにしてもまさか競技中までピアノを弾くとは思わなかったわ」
「ゔぉくより派手でよかった」
「なんかみんな僕より魔法が上手なのではと思えてきたよ・・・」
「セドリック、そんな事言ったら僕はどうなのさ」

・・・いや、一気に言わないでください、聞き取りきれないし。

「セドリック、私は得意分野で攻めただけで、咄嗟の判断力を含めた総合力では全然勝てないわよ。ハリーだって、クィディニッチという得意分野を生かした訳だし。」
「しかし私も人形使いだけど、ずいぶん使い方が別れたわね。」
「そうなの?後でゆっくりリプレイ動画を見せてもらうわ。」
「みんな、そんながやがや寄ってたかって話しかけてる間に得点発表が始まるよ」
「えっ!?本当?ジニー、グッジョブよ。」

競技場全体が水を打ったように静まり返る。
皆が皆、審査員席にいる審査員の方を見つめていた。

最初にマダム・マクシームが杖を宙に掲げる。その杖先から銀色のリボンのようなものが噴出して形作っていき、“8”を描いた。
続いて、クラウチ氏が杖を掲げる。杖先から黄色い光が噴出し“8”を描く。
ダンブルドア校長は赤い光の帯を出して“9”を描いた。

「ああ、これは競技時間の長さで減点を食らったのかな」
「多分そうだ」

バグマン氏はクラウチ氏と同じ黄色の光を噴出させて“10”を描く。
残るカルカロフ校長の杖先に、競技場中の人間の視線が集まっていく。カルカロフ校長は自分に集まる視線など気にしていないかのような平然とした動きで杖から灰色の光を噴出させて、“7”の数字を描いた。

「7点?ハリーとアリスには4点しか与えなかったのに、この差は何なんなのかしら?」
「きっとこれ以上贔屓してもクラムの1位が無理だからまともにつけたんだろう」
とジョージが言うと、
「流石、卑怯者で依怙贔屓のクソッタレだぜ」
ロンが喚く。

「42点、私と同点で1位ね、おめでとう。」
「ありがとう。ふゎゎ、眠い、寝ていい?」
しかし、
「・・・なお選手は試合前の天幕に再度集合してください。」
「どうやらもうしばらくお預けらしいわね。」
「ええ〜、そんな〜・・・。仕方ないなぁ、アリス、チョコレートちょうだい」
「持ってないわよ。」
「じゃあイチゴのショートケーキ、ひとかけら。」
「だからないって」
「ならば、チョコレートケーキ、ホールで」
「リン、ごねても結果は変わらないと思うよ」
「ゔぉくもはやく行くほうがいいと思う」

「むぅ・・・、分かったよ。」
仕方が無いからぞろぞろと天幕に向かう。

「相変わらず話に割って入れないのな、サンク。結局一声も発しなかったし。」
「仕方ないさ、フレッド。リンは昔っから、ああなんだから。」
「いの一番に声をかければいいのに。」
「無駄だよジョージ、アリスとハーマイオニーがいるんだ、さらっと流されるに決まってる。」
「またそんなこと言うし」
「ロン、俺はのんびり話がしたいのであってそれが今である必要はないさ。どうせ後で二人っきりになれるんだし。」
「まあ、そこが、我らがローニー坊やとの差だよな。」
「ローニー坊やも少しは見習え。」
「うるさい!」