完全自立人形は騒動の種

新入生歓迎会も終わりそこらじゅうで迷子の1年生が量産される中、私達3年は早くも時間割が配布された。

それで今は何をしているかというと、食堂へと急いでいた。無論人形達も一緒だ。途中で先に食堂へと向かっていたハリー達に追いついた。

「ハーマイオニー、そんなに急がなくても1限の占い学にはまだ時間に余裕があると思うよ。」
「あ、リンとサンク。昨日の夜見かけなかったけどどこにいたの?」
「あら、ちゃんと寮にいたよ?」
「私達が認識できなかっただけ?」
「そういうことだ。」
「はぁ・・・。それより確認したいことがあるんだけど、その人形、リンが動かして喋らせているのよね?」
「いいえ、違うわよ。動いているのも喋っているのもこの子たち自身よ」
「はじめましてー、かなえ、通称かなちゃんでーす。」
「草壁尚也だ。」
「草壁有希です。」

人形達がそれぞれ3人に挨拶をする。
それを見てハリーとロンは口を開けて固まっていて、ハーマイオニーは目を見開いている。
視線を感じて周りを見渡すと廊下にいる生徒もこちらを見ていた。

「え~と、それはつまり?前々からリンとアリスが言っていた、人形に魂を宿すっていう研究が完成した……ていうこと?」
「まぁ、うん。そうなるね」
「まあ、そうなるねって、ええっ!?」
「大きな声を出さない、ハーマイオニー。騒ぎになったら朝食どころじゃなくなるでしょ。」

こっちを見ている生徒の数がさっきより増えている。さて、何人に感付かれただろうか。

3人とも周りを見渡してなんとか我を取り戻したようだ。

「どういうことなのか、説明してほしいんだけど、流石にのんびり立ち話する時間はないわね・・・。」
「仕方ないなぁ、3人には今夜話してあげるから騒いだりしないでね。」

騒いでほしくない、はかなり本音である。騒ぎにならない、という事は望めないけれども、せめてアリスと同時に騒がれたい。
3人から騒がない、という確約がもらえたので休暇中の話をしながら食堂に向かい朝食をとる。

料理がまずい、というより美味しい料理がないことで知られるイギリスだが、ホグワーツの朝食も例外ではなかった。そう、一昨年までは。
今では美味しい朝食にありつける。こうしてみると一昨年頑張った甲斐があったなぁと感じる。
もちろん世界各国の美味しい料理が何時でも食べられ、家庭料理としても定着している日本と比べてはいけないのは分かっているが。
今日の1限は私と聖一ともに数占いだ。
それまでに寮に人形達を戻すのは確定事項として、アリスに会ったらこの件を相談しないと。などなどと考え事をしながらお話もしながら、食べていたのが間違いだったらしい。

「凛、早くしないと1限に間に合わないぞ。」
「え?うそ、やばい。」

気が付けば1限開始まであと15分だった。