束の間の休息

警視庁広域犯罪対策部5課の知り合いに声をかけて交通封鎖についてお願いしている最中に聖一と合流し、交通封鎖のお願いが終わり、桜木町の公園の前で車泊することにした。

「聖一にしてはずいぶん時間がかかったわね、交通管制への介入。」
「ああ、知ってる奴が今日みんな休みでな。」
「あややや。」
「ほんと疲れたぜ。」
「まあ仮眠を取ろう、それで少しは回復するだろ。」
「何時に行動開始する?」
「論文コンペティションは9:00からだから6:30まではのんびりしても問題ないでしょう。」
「3時間半か、束の間の静寂だな。」
「まあまあ。さっ、寝るよー。」

アラームをセットしてシートをリクライニングして眠りについた。

翌朝起きると・・・。

「・・・あれ、聖一が、いない?・・・なんで?」

車載端末のモニターをつけると書き置きがあった。

『おはよう、先に出かける。内閣府直属魔法師部隊の予備隊は6:50にここへ来るように手配した。』

・・・え!?今何時だ!?
時計を見ると6:48だった。

「危ない、寝過ごしてたらえらいこっちゃだった。」

大急ぎで顔をウェットティッシュで拭き、最低限の化粧をし終わる頃、ノックの音がした。

「おはようございます、お久しぶりですね、リン先生。」
「あ、佐藤くんだ。えぇっと・・・全員いるようね。・・・それでどこまで聞いている?」
「熱核攻撃を横浜と京都に仕掛けるらしい、と。」
「それだけ聞いていれば十分ね。対熱核兵器魔法師部隊の全員に直接攻撃を仕掛ける可能性よりは、交通封鎖の中横浜と京都に向かう車を襲撃する可能性が高い。今回の目標は、交通封鎖を始めるまでに敵の工作員を拉致または殺害することよ。途中から四葉の分家、黒羽も動くかもしれないけど鉢合わせしたら協力するように。工作員を見つけ次第私に連絡を頂戴。あとは任せて大丈夫?」
「了解です。」

そういうなり、早速ばらけて行動に移るようだ。

(そういえば黒羽に頼んだのはどうなったんだろう?)

とりあえず指揮を取ってるだろう、亜夜子ちゃんに連絡を取ることにした。

「リン先生ですか?おはようございます。」
「亜夜子ちゃん、それで?本家経由で頼んだお仕事、どうなっているかしら?」
「10人の小規模な集団を5つ、計50人捕らえることができましたが・・・」
「もっといる、と。」
「はい。どうしましょうか?」
「12:00まではそのまま続けて。12:00になったら敵の海からの侵入を監視して、動くようだったら眠らせるなり、拉致するなり、必要なら殺害して構わないわ。これは既に内閣府直属魔法師部隊の予備隊も動いてるから鉢合わせしたら協力するように。」
「了解しました。」
「何かわかったら連絡を頂戴。もちろん四葉本家への報告もお忘れなく。」
「忘れませんよ、わかりました。」

50人、かぁ。少ない。少なすぎる。600人から800人規模で工作員が既に潜入していると、眠る前に調べたらわかった。黒羽も流石に手こずっているようだ。事前に捕らえられるのは200人が限界だろうか。
現在7:10。達也くんが会場に着くまであと40分だ。まだ動くには早い。

(とりあえず会場に向かいつつ、情報収集して7:55になったら、達也くんのところに行くか。)

そう思ったが、朝食がまだだったことを思い出した。というわけで途中コンビニによって朝食と水を買い、お湯を沸かしてささやかな朝食にしたのだった。料理して紅茶を入れたのは人形たちだけど。