転生した二人は魔術とITを融合させる
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当サイトはのんびり気ままなn次創作サイトです。
……が、気ままが過ぎてオリジナルキャラや設定がごた混ぜになっています。
ぶっちゃけ原作キャラよりオリキャラの方が目立ってるとかザラです。
そういうのが苦手な方はご注意ください。
一応以下の作品の二次創作です。星月夜の窓の六神さんからは二次創作許可もらっていますが、背景設定にちらっと出てくる程度かな・・・。
他は二次創作と言っても跡形も無いくらい変わると思います。
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
ハリーポッターの世界に転生した二人が後に現代魔法と呼ばれる分野を始めるおはなし。
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
設定
人物
滝口聖一 -> Sanctuary Tonks
コナンワールドの住人。
4歳の時に、誘拐事件にあい、目の前で同じくらいの女の子(草壁有希、当時5歳)が切りつけられていくのを目撃。警察によって解放されるも、その送り届けるパトカーの女性警官が誘拐事件を起こし、今度は自分が切りつけられていく。そのおかげで数年間、人間不信に陥りる。
中1の時に巻き込まれたコンビニ強盗事件で有希と再会する。新一や快斗、平次とも知り合う。
黒ずくめの組織との戦いが終わった矢先、ガス爆発に巻き込まれ、凛と共に死ぬ。
転生した先はハリーポッターの世界だった。
トンクス一家に産まれた彼は前世で得ていたハリーポッターの世界の知識をもとに魔法書を読みふける。
その甲斐あって10歳で杖を手にいれた時すでにOWLクラスの呪文をほぼ操れ、家事関連の魔法もある程度操れるようになった。ただし、変身術は苦手。
1987年にこちらの世界で最初の事件に巻き込まれて以降、ホグワーツ入学まで探偵として活躍する。
菊水凛(きくすい りん) ->Lynne Chandler
コナンワールドの住人。聖一を社会復帰させた人物で、小中高と同じ学校で高校入学と同時に聖一と付き合いだす。
情報戦と人形作りで彼女の右に出るものは両手両足で数えられる。『ネットワーク』を小学1年にして落としたツワモノで彼女の功労のおかげで絶対不落のネットワークがある。
聖一が草壁と関わると同時に、草壁へ出入りするようになる。工藤達と共闘して黒の組織を倒すが、聖一と爆発に巻き込まれ共に死ぬ。
転生した先はハリーポッターの世界。
しかし、飯が不味く口に合わない。1986年、やむなく彼女はチャンドラー家の家庭に日本食が導入するべく料理本を翻訳する。これを出版したところイギリスでヒットし、この印税でこちらの世界でも当時高価であったパソコンを手に入れる。
追加魔法
- ムードゥス: -整頓せよ「散らかったものを整頓する魔法」
- フェルクシィバス: 物体操作 「非生物を術者の思い通りに操作する魔法。精度は術者の力量に比例し、高い制御が求められる。基本魔法」
- クアーリル: -探索せよ 「思い浮かべた人物を探す魔法。イメージを明確にしないと見当違いのものを探索してしまう。術者の力量に左右される呪文。基本魔法」
- イネシェタ・ウオネァラ・パティプラフナグ: ―沸き立ち、襲え、苦痛の牙よ
秘密の部屋でマルフォイが蛇を杖から出したように、蟻を地面から召喚する同系統の上位魔法。今回お呼びしたのはパラポネラ。噛まれると痛いです。
- キュイクリド: -「消臭せよ 消臭呪文。対象から発せられる匂いを無臭にする。呪文が切れた後は時間経過で元に戻る(再び匂いが付く)」
- ギュデート・イトゥムプパ!: -踊れ、石人形! 「石や岩から簡易的な作りの石人形を作り出して操る変身術。大きさは成人男性程度。同系統の変身術の中では数も用意できて操る負担が少ない、使い勝手のいい魔法。質量保存の法則に喧嘩売ってる。」
- アエスチーユス!: -耐熱せよ! 「熱や暑さから身を守る魔法。耐火効果もあり、ある程度の炎なら服が焦げる程度に抑える。ドラゴンの吐く炎の直撃は防げない。」
- インファルア・メティオム!: -炎症せよ! 「結膜炎の呪い。原作にあれど呪文が載っていなかったので捏造した。ドラゴンさえ悶絶して暴れるくらい痛い。」
- エムイベート!: -鎖になれ 「対象を鎖に変える変身術。術者の力量によって鎖の強度等が変動するが、本物の鎖を越える強度にはならない。材質的には鉄や鋼。」
- エオスキューマ: -泡よ覆え 「泡頭呪文。原作でも登場したが呪文がなかったため捏造。」
- フリジアチーユス: -耐寒せよ 「前回登場した耐熱呪文の反対呪文。」
- ノゥトアクア・プレスィリア: -水圧よ軽くなれ 「水圧軽減呪文。原作の選手たちはよく無事ですね。」
- ソレバァト・シルエミニ: -人魚になれ 「下半身を魚に変える。つまり人魚。鰓呼吸不可。耐水圧性なし。アリスが使うと夢の魔法に早変わり。」
- タトゥーム・スピティアム!: -消身せよ!「姿くらまし術。消身呪文という言い方も作った。透明マントみたいに姿を隠せる魔法。」
- シブ・オブディワン: -封鎖せよ 「扉を周囲の壁と同質に作り替える呪文。壁自体を作ることも可能なので、迷路を作りたいときには便利。」
- エト・フラーマ・ラーディス: -厄災の獄炎よ 「原作でもあった”悪霊の火”。呪文がなかったので捏造。」
- ラミナス・ヴェナート: -風の刃よ 「恒例のオリジナル呪文。
杖を振るった軌跡に沿った風の刃を放つ。
不可視かつ風の速さで迫り、飛距離が長く、人間は勿論トロールの手足ぐらいは切断できる。
その特性故に、不意打ち・奇襲にも使える初見殺し。
対人特化呪文。」 - インパートゥーバブル: -邪魔よけ 「扉などへの接触を防ぐ呪文。無理矢理接触を試みると、勢いよく弾き飛ばされる。元々魔法界にある呪文。モリーが不死鳥の騎士団会議の盗聴を防ぐために扉へ仕掛けた。」
- オンドゥ・ラビリントゥ!(undo rabylinyho) ー波動の迷宮!
- 術式解体(グラム・デモリッション)
- 術式解体(グラム・ディスパーション)
伏線
- ハリーは先天的な開心術師
- 炎のゴブレットのダンスパーティで最後にいた人が第2試合の人質
- ルーピン先生は甘党
メモ
魔法の発動原理
- (呪文を唱えるor強く意識する)
- ノイズやミス混じりの魔法式が紡ぎだされる
- (呪文を唱えたり強く意識することで魔法式が誤り訂正やノイズ除去処理をある程度受ける)
- 杖に魔法式が伝わる
- 誤り訂正やノイズ除去処理を行う
- 展開式と共に魔法光として照射される
- 任意の位置で魔法光が展開される
- 物体や情報空間、独立情報体、精神などの対象上で魔法光が展開され、の対象上で魔法光が展開され、作用する
パラサイト
余剰次元定理により異次元より流れ込んだ魔法的力が霊子と想子になり存在する生命体。
ポガート
霊子と想子から成り立つ。姿を変えるのは霊子が光学系魔法とベクトル反射魔法で実態空間に干渉するため。
条件魔法
その場所に宿る霊子へ干渉し、条件を満たさないときは空間を捻じ曲げ充した場合は精神干渉系と光学系魔法による偽装が施されつつ空間が戻る。
検知不可能拡大呪文
霊子に想子を流し続けることで空間を捻じ曲げ容積を増やす。
いずれも維持に想子が必要。術式解体は想子を高圧で吹き付け弾き飛ばす。
精神干渉魔法:実体空間になにかがないと干渉できない
実体空間:原子の存在なしに存在できない、重複存在(同一座標に複数の物体がある)は許されない
情報空間:精霊とかいる。実体空間の情報はここに存在。
情報は各座標において重複が許され、それぞれ優先度を持つ。優先度の高いものが実体空間に発現する。
まね妖怪:精神干渉する。実体空間から情報空間にパスをつなぐ。
精神干渉→恐れるものを読み取る→情報空間に新たにパスをつなぐ→情報空間に変身した姿を書き込む→優先度を変更→実体空間に発現。
コモーティオネ:情報空間の重複させた(変身している姿)情報をクリアする→情報空間と実体空間のパスを破壊→変身が解ける→ただの白い球に。
杖の魔法は精霊との契約の元行使される。その時魔法に署名が付けられる。
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
0巻 : 入学前
二人がHarry Potterの世界に転生する前のお話。
転生前のお話
突然の爆発音が私達を襲った。
熱い。熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い熱い。
息が苦しい。視界がぼやける。
周りには逃げまとう人たちが見えた。
一緒にいたはずの、隣りにいたはずの聖一が。
爆風で吹き飛ばされて遠くに見えた。
「聖一ぃ・・・!」
視線が合う。
爆風からは私同様に受け身を取れたようだが、体のパーツがバラけている。
なんとも理不尽に、不条理に!
聖一の命が、奪われていくのを見た気がした。
最後に、地面にぶつかる感触を感じた。
その次の瞬間、視界がブラックアウトした。
どこまでが実像でどこまでが虚像だったのだろうか。
遡ること2時間、私たちは東都大学にいた。
「お前ら、そろそろ授業なんじゃねーの?」
食堂で尚也と話をしていたらそんなことを言われた。確かにもうすぐ2時半だ。そろそろ大学に向かうか、と思い始めた時、聖一が
「いや、今日は2限からだからまだ大丈夫だよ。けど」
ん?「けど」?この件に関わる気なのかな・・・?
「けど、ってどうしたの?聖一?」
「凛、せっかく天気もいいし歩いていかねーか?」
ここで話す気はないらしい。そうとあらばここは同調して去ることにしよう。
「そうね、彼女は事務所にもう戻りかけているようだし、残りみんな警察に呼び出されていったみたいだし。ということはこれ以上ここにいる意味もないか。」
「な!?ずっと話していたはずなのにいつの間にそんなことを・・・いや、さすがは凛、というとこか。んじゃ俺もウロウロするか。」
そう、そもそも東都大学の食堂にいる理由は、今日も友人たちとあってから授業に行こうと思っていたからなのだ。
ところがどうも肝心の探偵×4とマジシャン約一名がバタバタと東都大学から離れたという情報をキャッチしたのだ。え?どうやって?企業秘密だ。
ともかくそんな感じで尚也と別れ、てくてくと私達が通う東都理科大に向かった。
「聖一、授業サボってこの騒ぎに関わるつもりなの?」
さっき疑問に思ったことを聞いておくと、
「この騒ぎ?いや、あいつら動いてるなら十分だろ。そうじゃなくて単純にお散歩デート。」
「デート?」
「そうそう。もうちょっとしたら寒くて歩きたくなくなるしなぁ。ちょうどいい時期でしょ?」
「なるほど」
その後は特に何を話すでもなくのんびりと地図も見ずフラフラと歩く。私は方向音痴だが聖一は太陽が出ていなくても地図も見ずに目的地へ辿り着ける。
だから安心して隣を歩いていた。
そう、何もしなくても入ってくる情報すら意識的にシャットアウトして。
ただひたすらに、今しかないこの瞬間を楽しんでいた。
その代償をすっかり忘れたまま。
神楽坂周辺は起伏が激しく、何度か登ったり降りたりした。
また、神楽坂周辺は夏目漱石ゆかりの地でもあり、他でもない東都理科大は漱石の代表作『坊ちゃん』に登場していたりする。
その途中漱石が最期を迎えた家の横を通ったりもした。
細い路地や住宅街をすり抜けつつ歩きはじめて一時間半位がたった。
いくら方向音痴でもこれだけ歩いて理科大につかないのはおかしいことぐらいわかる。
「聖一?なんか遠回りしてない?それもかなり。」
「ん?まあこのへんは歩いて来たことなかったからちょっと散策しようと思ってな。・・・イヤ、だった?」
「うん?まあいいけど?」
「まあ、ほら、そこに見えるのが靖国通りだ。我らが理科大市ヶ谷キャンパスまでもうすぐさ。」
靖国通りにでて、地下鉄の曙橋駅の入り口をスルーし、防衛庁や市ヶ谷駅のある方向に歩いていた。
ガソリンスタンドの脇を通ろうと、信号待ちをしていたときだった。
持っていた端末が鳴り出した。勝手に情報をもたらす端末は切っていたが、非常事態用のこの端末だけは例外だ。
本当に緊急事態しかならないように設定してあるそれが鳴っている。
「凛、すぐに離れるぞ!」
言われるより先に来た道を引き返し始めていた。
緩やかな下り坂を下りてきたトラックがガソリンスタンドに突っ込んだのが見えた。
(お願いだから、爆弾なんて積んでませんように!)
しかし次の瞬間。建てらてたフラグは直ちに回収され・・・。
目をさますとそこは知らない天井・・・ではなく霧に満ちた知らない空間だった。
体は痛くない。倦怠感は凄まじいが、怪我はしていないようだ。
起き上がる気になれないでいると、声が聞こえてきた。
「・・・とはどういうことだ!しっかり説明しやがれ!」
「だからこの件についてはとても申し訳なく思っている。」
「んな言葉が聞きたんじゃねー。」
聖一が誰かと言い争っている。うーん、がなりあって得るものはないと思うんだけどなあ。
とにかく起き上がろう。
「凛!起きたのか!痛いところは?」
「うん、大丈夫。けどものすごく・・・その・・・倦怠感が。」
「倦怠感?てめー、何しやがった!?」
「聖一!『てめー』が『手前』に由来する言葉だからこういう場面で使うな、っていつも言ってるでしょ?」
「んなこと言ってる・・・いや、いい。とにかくもう一度現状を説明しろ、ええっと、そもそも名前すら聞いてなかったな。」
「そういえばそうだったな。私の名前は残念なことに魔法契約によって言うことができない」
何を言い出してるんだ、この爺さんは。
「話しにならないわね。とりあえず識別ラベルとして機能すれば十分だから、ルキ、とでも呼ばせてもらうわよ。」
「ルキ、か。構わん。で、話を戻す。こちらの手違いでお二人が死ぬことになってしまった。」
「死ぬことなった?つまりここは死後の世界?」
「そうなる。何者かの陰謀か単なるミスかはまだわからんが誤って今日死ぬ人間のリストに加えられていた。生者の世界への干渉を担当した者は、すでに責任を取って地獄に落ちている。その担当者の証言によれば、リストに従い死ぬよう誘導するために君の意識を誘導して情報を得ないようにしつつあのテロの発生を防ぐはずだった君のご友人たちをミスリードしたそうだ。」
「っざっけんな!んな淡々と話すんじゃねぇ」
「聖一、ちょと黙ってて。で、テロというのは私達が巻き込まれたあの爆発?」
「そうだ。」
「なるほど。よし、一発グーで殴るからそこを動くな。」
ドスン、と殴りつける。動かないくらいの気遣いはできるようだ。
「すっきりした。で、これから私たちはどうなるわけ?さっきまで生きてきた世界には戻れないんでしょ?」
「残念ながら。」
「それで?そのミスだか陰謀だかに巻き込まれた私達に、ルキ、あなた達は何をしてくれるのかしら?」
「記憶を引き継いだまま、君たちの生きていた世界からすれば小説の中の、平行世界に産まれることができるようにする」
「転生、というものかしら?」
「そうとも言う。」
なるほど。転生、そう、転生か。戻れないことが確定した今、面白い選択肢かもしれない。
「人を殺しておいて、もう一度生きろ、と。・・・面白いわね。」
「面白いって・・・あのなぁ、凛。どう考えてもこの状況は、」
「それはそうと私達が死んだあと、元の世界はどうなったのかしら?」
「いやスルーすんなよ」
私のために怒ってくれているのはわかるが、ちょっと静かにしててほしい。倦怠感からか、さっきから声が脳にひびく。
聖一を目線で黙らせて、それから回答を促すと
「ならばその目で観察するといい。幸い時の流れを非常にゆっくりとさせてあるからまだ1分くらいしか経っておらん。」
時の流れをゆっくりに?それはそれは。
「なるほど。聖一、見に行くわよ。こいつらへの責任追及やら今後はあとまわしでまずは現状を把握しよう。」
「・・・わかったよ、後回しにする。」
あとから見ると凛の人格がちょっとおかしい気もしますが、彼女の設定上、弱っている聖一の前ではカッコつけたいんです。
それはそうと、理科大の10号館、神楽坂から遠すぎません?JR飯田橋駅からよりJR市ヶ谷駅からのほうが近いんですよ?もう市ヶ谷キャンパスでいいよね?
ちなみに理科大の10号館は化学系学科が実験をしたり講義を受けるのに使われます。
法政大学市ヶ谷田町校舎や新見附橋のところの法政大学大学院まで徒歩1分です。
転生とその代償
元いた世界を観測すること4日。原因となった事件は友人たちによって解決され私達の葬儀が終わり、その他色々あったがどうにか心の整理がついた。
「聖一」
今私たちは、死ぬ前に向かおうとしていた東都理科大市ヶ谷キャンパスこと、神楽坂キャンパス10号館の誰もいない学生実験室にいた。
「聖一」
呼びかけても反応がない。思考の海にいるようだ。まあわからなくはない。
これまでも平穏とはだいぶ程遠いアグレッシブな人生をすごしてきたが、私達自身が死を受け入れるにはまだ時間が足りない。
ルキ(仮称)の前では話をすすめるために冷静を努めていたが、私だって受け止めきれていない。
しかし、だからこそ決めたことがあった。
「聖一!」
「え?あ、凛。」
「あ、凛。じゃないわよ。呼ばれたら返事くらいしてよ!」
「ごめんごめん。ちょっと考え事をさ。」
「私、決めたわ」
「えっ」
「私、決めたわ」
「いやもう一度言えという意味じゃない」
「私決めたわ。細かな条件は詰めないと行けないけど、あのルキの転生させるという提案を呑むわ。」
「・・・本気で?」
「本気で」
「その心は?」
「私たちはまだ死を受け止めきれていない。生ある世界を堪能しきっていない。だからよ。」
「そうはいうけれど、ルキの言ったこと、信用できるか?」
「信用するかどうかは自分で判断する、死ぬ前と変わりはしないわ。」
聖一がうんうんとうなりながらしばらくぐるぐる歩いていたが、やがて
「わかった。お前に任せるさ。」
と言った。
「そう。ルキ!見てるんでしょ、もういいから出てきなさい。」
そう言うと私達の周りの風景が変わり、実験室から霧で満ちた空間に戻る。
「一週間くらいはかかるかと思ったんだが4日とはねぇ。それで我々の償いとしては、転生させればいいのかな?」
「そう急がない。幾つか確認することがあるわ。」
「なるほど。では1つ目は?」
「1つ目。転生先の世界は選べるの?」
「選べない。が君たちが知っている小説の世界にはなる。」
なるほど。それは朗報だ。何も知らない世界に放りだされることがないとわかって一安心だ。
「2つ目、転生先の世界での私達の能力は?選ぶ世界によっては生きるために能力が必要なこともあるでしょ?」
「それについては君たちの居た世界と同じくらいの地位を得られる程度の能力を本人の特質に合わせて自動的に付与される。家庭環境もだ。この点は干渉できない。」
「3つ目。私達2人が揃って同じ世界に転生できるのかしら?」
「難しいができる」
「4つ目。では同じ世界で私たちはどのくらい経てば再会できるのかしら?」
「それは非常に難しい。そもそも我々の視点では平行世界は観測できているのだから、その時点で世界が確定している。そこに君たちの存在を入れるためには確定していない部分に割り込むしかない。」
「シュレーディンガーの猫みたいね。続けて。」
「だから同時刻に産まれてかつ産まれてすぐ知り合うのは今の観測ではできない。できないことが確定しているからね。無理やり変えるためには世界に干渉する力が必要で残念ながら私はその力を持たない。また生まれてすぐお互いを探そうとするのも観測し確定している未来に反する。このように二人揃って転生させるのは難しい。」
「つまり?」
「二人揃って転生するためには、お互いについての記憶を一時的に失う必要がある。無論転生先の世界で再び出逢えば記憶の封印は解かれる。」
「ちょっとまて、記憶を失うとは具体的にはどういう状態なんだ?安易な記憶操作は人格が壊れるぞ?」
「お互いについて考えようとすると、意識がむりやりそらされる。だから忘れてはいけない何かを忘れているような感覚になる」
「5つ目。転生先の世界で転生する時間軸はどうなるの?」
「君たちはもともと大きな力を持っていたから転生先でも大きな力を得る。2つ目の質問で答えたとおりだ。大きな力を持つものにはそれ相応の役割が世界から求められる。つまりその力を発揮するのにふさわしい時間に産まれる。」
なるほど。二人揃っておなじ世界に転生しないという選択肢はありえないから、必然的に転生の代償として記憶の一部が封印されるわけだ。
「凛、どうする?」
「私は転生するわ。たとえ転生の代償に記憶の一部を封じられても、私達ならきっと再会できると思うの。」
「そうだな。」
私達の絆がたかが転生ごときに断ち切られるわけがないじゃないですか。
その傲慢を武器に転生先の世界を生きることを決めた。
シュレーディンガーの猫についてはまあ化学科の端くれなもんで物理化学とか無機化学の授業でも習うんですが、
それよりは「さくら荘のペットな彼女」でおなじみ鴨志田一先生の『青春ブタ野郎シリーズ』の影響が強いです。
しっかし油断すると会話文が多くなるのどうにかならないかなぁ(文才がない)
転生してみた(凛の場合)
どうやら私が産まれてから9ヶ月くらい経ったようだ。転生した事を思い出すのに・・・というより意識を持つのに随分時間がかかったようだ。
転生先がどの世界なのかは意外にもすぐにわかった。
ヴォルデモートなんて分かりやすい名前、そうそうよその世界にあってはたまらない。
そんなわけで現状を整理してみる。
私の名前はリン・チャンドラーと言うらしい。前世でも名前は凛だったから、実に面白い。そこそこの金持ちの家で、と言っても家政婦なんていないよ。
母の旧姓は死ぬ前の私の家名である菊水のようでさらに驚いた。しかもなんか有名な神社でかつ魔法が使えるっていうんだから、ますます驚きである。今は大学で機械関係の研究をしているらしい。
父は、母と結婚するまでは魔法とは何の関わりも無かったらしい。化学薬品会社に勤めているようだ。前世は東都理科大学の化学科の学生だったが、1年の途中でご覧の有様になってしまったわけだ。
その代わりではないが、積極的に質問していきたいものである。
前世では両親は私が生まれてすぐに亡くなったので、家族がいると言うのはなんだか不思議な感じだ。
さっきも言ったが、ヴォルデモートが全盛期のようだ。つまり暗黒の時代である。
今いるこの家にもなんだか結界のようなものが貼られているのが見える。
・・・なんで見えるのかと言うと、私がこの世界に転生して得た能力の影響のようだ。
少し意識するだけで色々な情報が見えてくる。人と人との繋がり、結界もその結果見えたものだ。
まあ無条件に情報が見えてこなくてよかったと思う。割と大量の情報が流れてくるので産まれてすぐこんなのが襲ったらおおよそまともな赤ちゃんじゃないだろう。
この能力についてはまだ誰にも話していない。嫌われたら、という考えが浮かぶ。随分と平和な思考になったものだ。
前世の記憶はかなり曖昧というかほとんど思い出せない。転生の経緯も思い出せない。重要な何かを忘れている気がする。
まあ、とりあえず周りのまだハリーの両親は死んでないし、ヴォルデモートもいなくなっていない。今は大人しく赤ちゃんをしつつ情報を集めるしかなさそうだ。
それはそうと、結論が1つある。
(おーなーかーすーいーたー!)
しかしまだまともに喋れない。よって泣いて誰か呼ぶしかない。
しっかし、こんな私でもちゃんと赤ちゃんやってけるもんだね、びっくり。
はい、ハリーポッターの世界に転生しました。ハリーと会うのはしばらく先になりそうです。聖一との再会の方が先ですからね。
後々の都合上、凛の名前は引き継ぎ、菊水は母の旧姓という事にしました。
凛の能力について正確に把握するのはもう少し先になりそうです。
転生してみた(聖一の場合)
TODO
ハリーとの遭遇
さてそれから約5半年経った。まだ聖一と再会はできていない。ちゃんと会える運命にするとか言ってたけど大丈夫かなー。あの神様どうも頼りなくって。
私の名前はリン・チャンドラーと言うらしい。そこそこの金持ちの家で、と言っても家政婦なんていないよ、3歳くらいまではベビーシッターが来てたけど。こちらでの父は化学薬品会社に勤めており、母は大学で元は機械工学をやっていたが、最近はコンピューターの研究に移ったらしい。時代的にパソコンにはしばらく触れられないと思っていたから思わぬ収穫だ。
さてとある春の休日、そう言うと桜の花を見たくなるのは私が元日本人だからだろうか、さっきBBCで皇居外堀の桜の中継が流れていたせいかもしれないが、外はうららかな春には程遠いどんよりした空気だ。
「・・・じゃあガス会社には・・・」 「ねぇママ、引越しってなぁに?」
そう、最近研究分野が変わった関係で引越しをする事になったらしい。で、まさかいきなり何処に?と聞くわけにもいかないからまずは引越しが何かを聞いたわけだ。一生懸命説明してくれる父と母。ごめん、あたいそれ知ってるんだ。
というわけで近くにあった地図を持って行き椅子に登って、ドン!と机に置いて今の自宅を指しながらこう聞いた。
「じゃあ何処に行くの?」
「サリー州の、ええっとブラックネルとアスコットの間の、マルチンハーソン駅の南のウィッチウッドアベニュー沿いの・・・ここよ。」
ページをめくりながら教えてくれた。
サリー州とはロンドンの南西にあり、問題のマルチンハーソンはロンドンの西南西、ポーツマス、サウザンプトンの北西、オックスフォードの南東に位置する。ちなみにアスコットとはかの有名なアスコット競技場のあるところである。
・・・ん?ちょっと待てよ?サリー州といえばハリーポッターが住む叔父の家があったよな・・・って、あ・・・。
プリベット通りはマルチンハーソン駅を挟んでちょうど反対に位置し、700 mくらい、徒歩にして8分くらいの距離にある。
(家が近い!て事は小学校一緒になるのか、想定外の遭遇の早さだな・・・)
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
1巻 : 賢者の石
ついにホグワーツ魔法魔術学校へ向かうことになった2人。しかしどうあがいても探偵は探偵だった。
9と3/4番線からの旅
さて、入学の日がやってきた。今日もウォーキングをするべく、外にでた。ホグワーツに行くからしばらく出来なくなるだろう。
先週お尻に尻尾を生やされてからダドリー達はウォーキングには来てない。
「ダドリーさんのとこに顔を見せに行くんじゃなかったの?」
「はいはい」
先に出ていた母が急かしている。てくてくと歩き出した。
ダーズリー宅につき、ダドリーパパが出てきた。
「おはよう御座います、バーノンさん。」
「リンか。しばらくぶりだな。どうもうちの、あー、ハリーと学校が同じらしいじゃないか。」
「ええ、驚きました。ところでその学校から説明に来た人と一悶着あったようですが、ダドリーの具合はどうですか?なんでも尻尾を生やされたとか?」
「知っとったんかい。」
「私の元に集まらない情報はあんまりないですから。」
というと、苦虫を潰したような顔になる。まああの件を忘れられるわけもないか。
「見せていただけませんか?治せるかも知れないですし。」
「構わんが・・・、ダドリーや、こっちまでおいで。」
みると確かにダドリーから尻尾が生えてる。笑いこけそうになったが、ポーカーフェースで隠しながら観察した。
(ハグリッドって杖を折られて、傘の中に隠していたんだよね?それでこんなに上手く長持ちする魔法がかけられるの?)
これはハグリッドそこそこ頭良かった説あるか?なんて思ったが、そんな場合ではない。
杖を使って変身術を解くのは簡単だが、魔法陣を書くほうが確実だろう。
「多分治せると思いますよ。なるべく綺麗で折れ目のないA4の紙と万年筆はありますか?」
「何をする気だ?」
「魔法陣を書きます。それが最も事故の可能性なく安全ですから。」
「分った」
魔法陣は別に1分あれば書けるのだが、あえて2分かけて丁寧に書く。
「ダドリー、そこへうつ伏せになってくれる?」
「なんd」
「そのほうがやりやすいから」
「わかったよ、こうか?」
「うん。じゃあイメージして、尻尾が取れて外で遊んでいる自分を。」
そう言いながらダドリーに触れる。本人に触れていたほうが魔法はかけやすい。
「さぁ始めるよ。3、2、1、はい!」
尻尾が無事に消えた。
私がダドリーに話しかけるより先にバーノンおじさんが飛びかかって抱き合ってた。そりゃ、いきなりどこの誰かわからんやつに変身させられたら、いろいろ思うところはあるだろう。おや、ペチュニアおばさんまで乱入した。
ふと後ろを見ると母がのんびり紅茶を飲んでいた。だめだ、これ今日の仕事サボる気だ。
しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻したようでお礼を言ってきた。
「感謝する、リン。」
「いえいえ、大したことはしてないですよ。」
「いいや、本当は今日駄目元で市街まで出て医者に見せようかと思っとったんだ。手間が省けた。さて、何かお返しをするのが対等な立場というもんだろう、何がいい?」
「おや、こんな子どもと対等な立場だなんて、高評価に驚きを隠せませんね・・・。そうですね〜・・・。」
そういう展開になるとは思っていなかったので、何を言うか迷ったが。
「では2つ。どちらも簡単ですから。」
「ほう。それは?」
「ひとつはたまに母の話し相手になってやってください。極稀にうつ気味になるので。もうひとつはとある会社との業務提携を検討してみてください。検討だけでいいですから。」
「その会社とは?」
「まあ後で手紙をだしますよ、ただ、フクロウ便になると思いますがご容赦くださいね。ところで一体いつになったらハリーはその物陰から出てくるんですか?」
そう、ずっと廊下にいるのである。
「うわ、ばれてた?」
「あたりまえです、ダドリーですら気がついてますよ。全く私があなたと話せる日を一週間も恋い焦がれてお待ちしていましたのに。」
・・・
「リン、この小僧の事が」
「そんなわけないじゃないです、冗談ですよ。」
ふぅ、とため息をつくバーノンおじさん。ハリーはというとなんか疲れた顔をしている。
「だいたい私には好きな人がいますし。」
「えっ!?」
なんかやたら驚かれた。母まで驚いて手が止まっている。ハリーは、告白されてもずっと断ってるから興味ないのかと思ってたとかブツブツ失礼なことを言っている。
「たぶんみんな知ってますよ、テレビで小学生探偵としてもてはやされてる、サンクチュアリー・トンクスですよ。事件現場で一緒になったことがありまして。」
いやいや、ちょっと待って、とは我が母の言いよう。おう、どうしたんや?
「リンにもついに初恋が!?」
おう、そっちかい。なんて思いながら。
「そうですね。一目惚れでした。ああ、ところでその話を聞いて思い出した。ハリー、今日どうやってキングズ・クロス駅まで行くつもり?」
「うーん、おじさんに送ってもらえるように昨日お願いして、ダドリーを治すついでだからって言われたんだけど。」
「私が治してしまったからおじゃんになった、と。なるほど。では私と一緒に行きましょう。ハリーならまあ一緒でもサンクも文句を言わないでしょう。」
「ありがとう・・・ってあれ、サンクって?まさかさっき話してた・・・」
「そうよ、彼もホグワーツだし。で、ということで構いませんか?バーノンさん?」
「え、あぁ。こぞ・・・ハリーを連れて行かなくて済むのは助かるが、どうやって行くつもりだ?」
「電車で。というわけでハリー、きっちり2時間後に駅で待ち合わせましょう。私より後に来たら後で何がおごってもらうからね。」
「ええっ!?うーん、分かったよ・・・。」
という感じで家に戻り支度をして、母とお別れして、5分前に着くように駅に向かった。
「お待たせ、待った?」
「30分くらい。」
「そういう時は、そんなに、って言うものよ。ていうか早すぎない?」
「追い出された。」
「はぁ、なんというか薄情というか・・・。まあいいわ、電車が遅れると嫌だし、さっさと乗りましょう。」
電車に乗ってしばらくしてハリーが聞いてきた。
「ねぇ、9と3/4番線なんてあるの?」
「ありますよ。ある種の空間を拡張する魔法がかかっているそうです。そもそも、だってその魔法がかかっていますし。使えるようになってみたいですね、そんな魔法。」
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
2巻 : 秘密の部屋
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
3巻 : アズカバンの囚人
リンが作り上げ発表した完全脱狼薬のおかげで、リーマス・ルーピンが闇の魔術に対する防衛術の先生になった。
イギリスは、アズカバンに収監されていたシリウス・ブラックの脱獄の影響で魔法界・非魔法界問わず蜂の巣をつついたような騒ぎだった。
ところがそのシリウス・ブラックに冤罪の疑いが浮上する。
暴走か?襲撃か?
ギングズクロス駅をホグワーツ特急が出発して30分、認識障害魔法がかけられたコンパートメントの中ではアリスがグリム童話の朗読をしていた。
アリスが生み出した上海、蓬莱、露西亜と私が生み出した有希、尚也は多少はしゃいだりしながらも読み聞かせを聞いている。
かなちゃんは興味がないらしく有機官能基分析の実験をおっぱじめていた。
聖一は推理小説の読書、私はプログラミングをしていた。
ホグワーツ到着まであと一時間となった。認識障害魔法はしっかり効いているようでのんびり過ごせている。
簡単なカーテンの仕切りをたてて3人とも着替え終えたところで列車が減速を始めた。
「ねえリン、減速してるように感じるのは気のせいかな?」
「私もアリスの言う通り、減速してると思うけど聖一、どう思う?」
「うーん、線路に障害物があると連絡を受けたか、ハイジャックされたかじゃないかな。」
「リン、気温が低下しているよ、気温変化と時間の関係グラフが反比例のグラフに一致する。」
「ついでに魔力が流れ出している。」
「気温低下に魔力流失?聖一、吸魂鬼に違いない、守護霊の呪文を。」
次々と私の人形達が報告する。うん、とっても優秀だね。
「かなちゃん、有希、尚也ありがと。」
『エクスペクト・パトローナム! ー守護霊よ来い!』
私が人形達にありがとうを言うと同時に聖一が守護霊の呪文を唱える。しかし有体の守護霊には程遠く、霞程度しか出ない。吸魂鬼の絶対数が多すぎるようだ。
窓ガラスが凍りはじめ、吐く息が白くなるほど気温が下がる。ガラガラという音も聞こえ、通路へのドアのガラス越しに黒い影が見える。
「ちくしょう、私も守護霊の呪文が使えたらよかったのに・・・。有希、尚也、かなちゃん、上海、露西亜、蓬莱、いつでも逃げられるように準備を!」
その時、隣のコンパートメントから呻き声に似た悲鳴が聞こえた。
「今のハリーじゃ?」
「そうね、嫌な予感がする。」
「リン、そういう事は思っても言っちゃ・・・」
「ここにシリウス・ブラックを匿っている者はいない!ここから去れ!」
突如として部屋の中から聞こえた声に驚くも、目の前の吸魂鬼は気にも留めていないのか再びガラガラと音を発している。だが次の瞬間、部屋の中から銀白色の動物が飛び出した。そして吸魂鬼は銀白色の動物に追い出されるように、この場から離れていった。
吸魂鬼がいなくなると同時に冷たい空間となっていた場が元通りの暖かい空間へと戻り、凍りついていたガラスも元通りとなっていた。
「これが守護霊の呪文の真の力か・・・。」
「聖一・・・。やはり学ばずにいるわけにはいかなそうね。アリスもそう思わない?」
「そうね。とりあえずハリーたちのコンパートメントに行きましょう。」
「失礼するわね、吸魂鬼が来たけど全員大丈夫・・・ではなさそうね・・・。」
「アリス!?それにリンとサンクも。」
ハーマイオニーがこの騒ぎでどうも軽いパニックになっているらしく、声が裏返ってる。
「あなたは、あなたは、闇の魔術に対する防衛術の新任教師のリーマス・ルーピン先生ですね?初めまして、サンクチュアリー・トンクスといいます。先ほどの守護霊の呪文はお見事でした。それで、ハリーの容体は?」
「あぁ心配はいらないよ。少し気を失っているだけだ。しばらくすれば目を覚ますだろう。君は守護霊の呪文を知ってるのかね?」
「霞み程度なら出せます。」
「ちょっと待った、吸魂鬼とか守護霊の呪文って何だ?サンク。」
「ロン、ええっと・・・。リン、説明任せたー。」
「うん、任された。
・・・吸魂鬼とは、一般には『口付け』と呼ばれる行為によって魂を吸い取ることができる生物で、他の生物の幸福感を糧として生存します。
現在イギリス魔法界では牢獄アズカバンの看守であり、魔法省は吸魂鬼がアズカバンにいるからこそイギリスの半数の人は枕を高くして眠れるのだと答弁していますが、ホグワーツ現校長アルバス・ダンブルドア始め反対派も多数存在します。
それで守護霊の呪文とは空間中に守護霊と呼ばれるプラスのエネルギーの塊を作り出す呪文で、吸魂鬼を追い払うことがてきます。
また、エネルギーなので作用・反作用の法則が適用されます。
使用には強い幸福感が必要です。術が使いこなせないと霞のような形で吸魂鬼を退ける程度の威力ですが、熟達すれば術者に固有の有体の守護霊を作り出せ、完全に追い払うことができます。
難易度は吸魂鬼の数と幸せな記憶の強度、心理状態、術者の技量に依存しますが、一般にOWLを超えるレベルです。
・・・な感じでいいかな?聖一。」
「ちょっと余計な話も混じったけどまあいいか。
大事なのは現在のところ吸魂鬼を退治することはできず、唯一守護霊の呪文によって追い払うことができる、ということだな。」
「二人とも、そこまで説明したら闇の魔術に対する防衛術の先生の立場がないじゃないか。だいいち作用反作用の法則との関連についてはつい4年前の研究でわかったばかりなのに。しかし霞み程度とはいえ守護霊の呪文を使えるとは流石、というべきだろうね。」
「サンク、凄いわね・・・じゃなくて、なんでアズカバンの看守たる吸魂鬼がこんなところにいるのよ?」
「ハーマイオニー、そんなの考えなくてもわかるじゃない。この数ヶ月、魔法界のみならずマグルの世界までニュースを騒がせてたのは誰?」
「アリス、それってつまり・・・」
「そうだ。奴らはシリウス・ブラックを追って捜査網をどんどん広げている。今回汽車を止めたのもその一環なのだろうが、いくらなんでも非常識すぎる。私は今から運転手のところに行って話を聞いてくる。」
そう言ってルーピン先生は立ち上がり、部屋を出る前に、全員にチョコレートを渡した。
「食べるといい。気分が落ち着くよ。その子にも目が覚めたら食べさせてあげるといい。」
チョコレートを配り終えたルーピン先生は、そのまま汽車の先頭へと向かって進んでいった。
「それじゃ私達も戻るわ。もうすぐ到着すると思うから早めに着替えた方がいいわよ。」
「じゃあまたね。」
3人揃ってコンパートメントに戻る。
「守護霊の呪文、教師役はパチュリーに頼もうかと思ったけど、もっと身近にいたわね。」
「ルーピン先生か、落ち着いたらお願いしようか、アリス。」
「落ち着いたら?」
「私達の人形、騒ぎにならない訳がないよね?」
「なるほど、うーん、いやだなぁ。」
「おいおい、新学年始まったばかりだぞ、もうすこしポジティブに考えようぜ・・・。」
「そういえばサンク、さっきなんであの人の名前と職業が分かったの?」
「簡単なことだろ、アリス。荷物棚に荷物、名札がついていた、新しい先生といえばほぼ間違いなく闇の魔術に対する防衛術の先生。」
「さすがサンク、伊達に探偵やってないわね。」
「アリスが寝ぼけてただけだと思う。」
「リン、あのね、あなた達が探偵だからってそれを基準に・・・いや、なんでもない。」
そうこうしているうちに今度こそ本当に列車が減速し始めた。
完全自立人形は騒動の種
新入生歓迎会も終わりそこらじゅうで迷子の1年生が量産される中、私達3年は早くも時間割が配布された。
それで今は何をしているかというと、食堂へと急いでいた。無論人形達も一緒だ。途中で先に食堂へと向かっていたハリー達に追いついた。
「ハーマイオニー、そんなに急がなくても1限の占い学にはまだ時間に余裕があると思うよ。」
「あ、リンとサンク。昨日の夜見かけなかったけどどこにいたの?」
「あら、ちゃんと寮にいたよ?」
「私達が認識できなかっただけ?」
「そういうことだ。」
「はぁ・・・。それより確認したいことがあるんだけど、その人形、リンが動かして喋らせているのよね?」
「いいえ、違うわよ。動いているのも喋っているのもこの子たち自身よ」
「はじめましてー、かなえ、通称かなちゃんでーす。」
「草壁尚也だ。」
「草壁有希です。」
人形達がそれぞれ3人に挨拶をする。
それを見てハリーとロンは口を開けて固まっていて、ハーマイオニーは目を見開いている。
視線を感じて周りを見渡すと廊下にいる生徒もこちらを見ていた。
「え~と、それはつまり?前々からリンとアリスが言っていた、人形に魂を宿すっていう研究が完成した……ていうこと?」
「まぁ、うん。そうなるね」
「まあ、そうなるねって、ええっ!?」
「大きな声を出さない、ハーマイオニー。騒ぎになったら朝食どころじゃなくなるでしょ。」
こっちを見ている生徒の数がさっきより増えている。さて、何人に感付かれただろうか。
3人とも周りを見渡してなんとか我を取り戻したようだ。
「どういうことなのか、説明してほしいんだけど、流石にのんびり立ち話する時間はないわね・・・。」
「仕方ないなぁ、3人には今夜話してあげるから騒いだりしないでね。」
騒いでほしくない、はかなり本音である。騒ぎにならない、という事は望めないけれども、せめてアリスと同時に騒がれたい。
3人から騒がない、という確約がもらえたので休暇中の話をしながら食堂に向かい朝食をとる。
料理がまずい、というより美味しい料理がないことで知られるイギリスだが、ホグワーツの朝食も例外ではなかった。そう、一昨年までは。
今では美味しい朝食にありつける。こうしてみると一昨年頑張った甲斐があったなぁと感じる。
もちろん世界各国の美味しい料理が何時でも食べられ、家庭料理としても定着している日本と比べてはいけないのは分かっているが。
今日の1限は私と聖一ともに数占いだ。
それまでに寮に人形達を戻すのは確定事項として、アリスに会ったらこの件を相談しないと。などなどと考え事をしながらお話もしながら、食べていたのが間違いだったらしい。
「凛、早くしないと1限に間に合わないぞ。」
「え?うそ、やばい。」
気が付けば1限開始まであと15分だった。
仮拠点から探索してみよう
夜11:00、校内をうろつく影が2つあった。影は嘆きのマートルのトイレへと向かっている。
「そこでこそこそしてるのはだ〜あれ?って、リンとサンクじゃない、こんばんは。」
「久しぶり、マートル。」
「こんなに夜遅く出歩いて校則違反じゃないの?」
「バレなければ問題ない。さっそく開けるか。」
「あら、秘密の部屋にでも行くのかしら?」
「そう。オフレコな。」
と聖一がいうとぷんぷんしながらトイレの個室に飛んでいく。
蛇語で入り口を開けると大きなパイプがあった。
「とりあえずここからキレイにしますか。」
「だな。」
「「スコージファイ! ー清めよ!」」
何度かに分けて呪文をかけるとようやくキレイになる。お次は・・・。
「なんでハシゴをかけるの、それも縄梯子・・・。」
「念には念をってさ。」
梯子をかけておよそ地下5階の高さまで下に降りるとそこは・・・。
「骨の海か、あまり嬉しくないな。」
「どうする?この骨。全部のける?」
「それしかないな。と言っても消失呪文はまだ使えないから、どこかの通路に入れてしまうしかできないわけだが。」
「秘密の部屋への通路はこれかな?なんかものすごく崩れてるけど。」
「そういえば二次原作ではアリスは別の入り口から入ってきてたよな。」
「『隠し出入り口は学校の裏手側にある、崖岩に隠されていた。岩が重なり合うように隠されていた場所には蛇の彫刻が施されている。』だったっけ。とりあえず、そっちは後回しにしてまずは秘密の部屋に行きましょう。」
通路は崩れていて、瓦礫が散乱して通路を塞いでいた。
どうやらハリー達が脱出した後さらに崩れたようで、まずはこの修理をしないといけないらしい。
「レパロ ー直せ」
「いや、範囲が広すぎてだめだろ。壊れた時間も昔すぎる。」
「駄目元だったけど、やっぱりだめか。」
「ああ、エントロピー増大則に反するから必要エネルギーが浮遊や攻撃魔法に比べて難易度が高いんだ。ついでに言うと粉々だから再結合させる原子数もほぼ無限に近いな。」
「ならどうするのよ?」
「セメントの主成分は、けい酸三カルシウム、けい酸二カルシウム、アルミン酸三カルシウム、鉄アルミン酸四カルシウムだ。つまり?」
「変身術で元素を変容させろと?」
「二人でやればできるだろ。気をつけるのはけい酸三カルシウムとけい酸二カルシウムとその他の質量比が56:24:10ということだ。これを間違えると固まらない。ついでにこのバジリスクの抜け殻にも材料になってもらおう。」
「それと粗骨材になるこの瓦礫はもっと砕かないといけないね。」
「頼んだ。」
「アグアメンティ ー水よ、レダクト ー粉々に」
湿らせてから粉々に砕いて、さらに3秒カウントダウンしたところで、その一部をセメントに変える。
それとは別に一部は鉄に変身させて砕けた部分に鉄筋としてはめる。
さらに、セメントと粗骨材である瓦礫を水を加えつつ混ぜ、浮遊術と物体操作術で壊れたところにはめこむ。
最後に少し残ってる瓦礫を木の板に変身させて型にすれば作業完了だ。
40分もかかったが。
「24時間もあれば固まるだろうから、とりあえずここはこれでいいか。」
「聖一、お掃除忘れてる。」
お掃除をすませて先へ進むと扉があったので蛇語であけると大きなホールがあり、傍にお墓があった。
「これが2次原作で作られたバジリスクのお墓か。
お墓を荒らすのはしたくないんだけど、バジリスクの毒は欲しいのよね、いくら後でアリスから研究結果を貰えるようにしたとはいえ。」
「まあ、拝んでから少しだけ分けてもらおう。」
なんとなく仏教式に拝んでから積み上げられた石の隙間から中に入ってバジリスクの毒をクリスタルガラスの小瓶にとる。
気がつけば1:00だ。検知不可能拡大呪文をかけたバッグからベッドを取り出し、さっさと寝る。
人形を呼び出してサンドイッチを持ってきてもらい沸かしたお湯で入れた紅茶と共に食べて朝食を済ませると、昨日は後回しにしたアリスが入ってきた入り口を探す。
四方位呪文で方向のおおよそのあたりをつけ、あとは道を観察してすすむ。最近通ったならば、蜘蛛の巣がそこだけないとか、足跡とかそういうものを見つけられるはずだ。
ここまでは整地と清掃しながら歩いてきているので迷いようもなかったが、ここからは迷うといけないので、25メートル間隔で明かりをつける。あらかじめ確保しておいた木の棒に火をつけ、壁に穴を開けて松明設置完了だ。
分岐には道標をたてる。
設置に手間取ったり迷ったりしたが、1時間後、どうにか学校の裏手、競技場の方の出入り口にたどり着いた。確かに、蛇の彫刻が施されている。
「へえ、こんなところに出入り口があったのか、何回か来てるはずなんだけど気がつかなかった。」
「だな、もしかしたら条件魔法のようなものがかかっているのかもしれないな。」
「条件魔法?」
「条件魔法、情報空間のデータをタブラせて、条件によってその優先権を書き換えることで実体空間に存在するものが変わるように見える魔法だ。条件を満たさない場合は存在を無くされた部分を埋めるようにその部分の実体空間の座標面がひどく歪む。検知不能系魔法に似ているかもな。」
「タブラせるなんて出来るの?実体空間では同じ座標に2つ以上の物体の存在は許されないけど。」
「許される。これを利用すると、例えば見かけの自分の位置と実際の自分の位置をずらす事ができる。」
「なるほどね。検知不能系魔法に似ているというのは?」
「よくあれは空間を捻じ曲げて拡張しているように説明されるけど厳密には違って、別の情報空間を内容量に応じて定義して情報空間同士をリンクさせてるんだ。もちろん呪文がかかる前の容器の出し入れ口の大きさを超える物が出入りするときは実体実体空間が歪むからあながち間違ってはいないが。」
「実体空間の歪みというのは、各座標の情報空間の単位ベクトルと実体空間のそれが一致しない状態。ないし存在した座標が消滅した状態。もしくは存在しない座標が追加されることと思っていいの?」
「ま、そんな感じだろ、今解ってる範囲ではな。さて、戻るか。」
来た道に建てた道標へ、学校の裏手の出入り口の方向を書き加えたり、清掃しつつ仮拠点に戻る。本当に魔法って便利だ、魔法なしじゃ1週間はかかったに違いない。
本来の目的=拠点作成
一番初めの骨の海は、杖の一振りで使わない通路に押し込めてきれいにする。
そして骨の海と仮拠点の間に、本来ここに来た目的である拠点を作る。
「特に広さとか決めてなかったが、どの程度にするんだ?」
「そうねー、6畳の和室と押入れ、温泉に6畳の寝室、18畳の研究室2つに5畳の保管庫、6畳のコンピューター室、6畳の休憩場所が作れればいいんじゃない?」
「結構広いんだな・・・。じゃあ平面図は・・・」
「ってなんでそんなサラサラと平面図を書けるのよ。」
「基本的に左右対称にしとけばいいだろ。特に制約ないんだから簡単だろ。」
「そういえば神社も欲しいわねぇ。」
「神社?どこから分社するんだ?それに神主は誰だよ。」
「神主は聖一でいいじゃん。神様は信じればボウフラみたいに湧いてくるわよ、きっと。」
「断る!だいいち神様の扱いが酷い。仮にも神職の家系に転生した身だろうが?」
「まあ、いいっか。神社は後々ということで諦めるとして、じゃあお昼までにさっさと掘りますか。」
早速穴掘り呪文と爆破呪文、切断呪文、それから持ってきたメジャーを駆使して部屋を掘り抜く。
壁の厚さはそれぞれ3メートル程度にして、強化呪文やら保護呪文やら耐火耐水呪文やらをかける。
現在13:00。
部屋作成も残すは温泉のみだ。
現在は2人揃って昼食だ。
人形を呼び出したら立派な食事にありつけた。
どうやら尚也は、しもべ妖精ともう仲良くなったらしい。
作って1ヶ月も経たないのに、恐るべき成長ぶりだ。
基本的に仲睦まじいカップルとしてみられる聖一と凛だが、意見対立が生じることは無論ある。
昼食の後、温泉作りにとりかかったわけだが、意見対立が生じた。
どういうことかというと、まず聖一は、浴場は男女分けるべきと主張した。これに対し凛は、更衣室はともかく、浴場は同じでいいと主張した。
聖一も面倒くさがりな性格だが、それとモラルとを天秤にかければ後者に傾くのに対し、凛はさらに面倒くさがりだった。
およそプログラマーなんて面倒くさがりでなければ務まらないのだから当たり前と言えるかもしれないが。
もちろん二人とも入るのは自分達だけだろう、とは分かっていた。
30分近くも言い争った末、露天風呂のみを混浴にすることで決着した。え?その間に作れたろうって?黙らっしゃい!
温泉の形作りはすぐ終わったが、肝心の温水の確保はなかなかうまくいかなかった。
ここはイギリスで、日本と違い、掘れば温泉が湧き出るわけではないからだ。
当面は地下水を汲み上げ浄化して加温することで妥協することになった。
家具や最低限の実験器具、薬品、台所用品、パソコンなどをさくっと設置しソファーでココアを飲みながらくつろぐ。
「なんとか日が暮れる前におわったな。」
「うん、途中脱線したけどね、よかったよかった。」
「もう終わったからいいけど、もうすこし自分が女だっていう自覚持てよな、全く。」
「はいはい。・・・なんだか眠くなっちゃった、お昼寝していい?」
「だめだ。」
「どうして?」
「いくら今日が休日でも夕食の席にいないのはまずいだろうが。寮監ならまだ誤魔化せても校長までは誤魔化せなくなるぞ。」
「わかったよ。あ、そういえば昨晩補修したところ、型を外しとかないと。」
「あ、そうだった、忘れてた。」
「今度出口までトロッコとか、そういう何かをひきたいね。徒歩30分は流石にいただけない。」
「そのためには測量しないといけないな。」
「魔法界にもGPSのようなシステムが必要よね。Local Positionong Systemみたいな名前でどうだろう?」
「いや、今回に限れば2つで一対の機械を作ってお互いの方向を指し示すだけでなんとかなるんじゃないか?」
「なるほど、四方位呪文があるのだから、その基準対象を変更すればなんとかなりそうね。」
「しかし無線通信がこうもことごとく潰されるというのは厄介だよな、ホグワーツの保護呪文も。」
「早く突き止めたいよね。」
ルーピン先生の初授業
闇の魔術に対する防衛術とは、闇の魔術が実際に使われるような場面で効果的に、かつ効率的に自分の身を守るかを教える授業である。
おもに有用な魔法の習得と適切な状況判断力、そして速く正確に魔法式を組み上げることを学ぶ事がメインとなる。
・・・そう、そのはずの学問である。
ところがこの2年間それが果たされているとは言い難かった。
一昨年はおっかなびっくり教師、去年は人材の枯渇を象徴するなにかが教鞭を握っていた。
何故か毎年担当教師が変わる授業で、ハリー曰く5年連続だそうだ。ところが実際はもっと長いらしいく、少なくとも15年連続である。
やがて時間になり、教室へと入ってきたルーピン先生は以前見たときと同じ年季の入った服装をしていた。
「みんな、はじめまして。これからこの学科を担当するリーマス・ルーピンだ。期待を裏切らないように精一杯やっていくのでよろしく」
初回の授業は原作と同じくポガートだった。
教室を出て職員室へと向かう。
途中ピーブスと出くわしたり職員室に着いてすぐスネイプ先生と一騒動あったが授業が始まる。
職員室奥の古い洋箪笥がガタガタいったり、飛び跳ねたりしてる。
「ああ、怖がる必要はない、中にまね妖怪ーーポガートが入っているんだ。さて、最初の質問、ポガートとはなにか、説明できるものは?ああ、ハーマイオニーグレンジャー。」
「はい。まね妖怪は形態模写妖怪と言われていて、相手が一番恐れるものに姿を変える生き物です。
人が目撃するときは常に何かに変身しているためその真の姿を見たことのあるものはありません。
マグルが発明した塩銀写真では写真を見る者の恐れる姿に見えます。
また、同じくマグルが発明したデシタルカメラで昨年撮影を試みたところ、データは変わっていないのに見える姿が異なるという状態となりました。
いかにして人間の精神に侵入しているのかという点で現在日本との共同研究の対象となっている生物でもあります。
生態は暗くて狭いところを好みます。」
「まさかそこまで知っているとは思わなかった、デジタルデータからの解析の論文が出たのは去年だったと思うが。
というわけでそのまね妖怪を追い払う術を身につけよう。
さっきも説明してくれた通り、対峙する人の怖いものに変身する。この点で私達はすでに有利な立場ににいるわけだが、2つ目の質問、なぜ有利なのでしょうか?ハリー。」
「えーとーー僕たち、大人数でいるのでどのような姿に変身すればいいのかわからない?」
「正解。2人以上、対峙する人数が多いほど、混乱を誘うことができる。
さて、まね妖怪追放に使う呪文は『リディクラス ーばかばかしい』だ。まずは杖なしで、発音は正確に。」
『リディクラス!』
教室中を呪文を暗唱する声で満たされ、ワンワンと反響する。
「うん、それでいい。
それでこの呪文だか、真にその力を発揮するためには笑いが必要だ。
ああ、そこ、ばかばかしいとか言わない。ばかばかしい、滑稽だと思うことが大事なんだ。」
というわけで一人一人対峙することになった。
ネビルがスネイプ先生に化けたまね妖怪の姿をネビルの叔母さんの服装に変えて笑いをとった。
「じゃあ次はミス・リン!」
私の番になった。私に怖いものがないなんてことはないが、何が一番なのかは気になる。
パチン!
それはこの世界に来るきっかけとなったあの爆発事故だった。目の前で聖一が死んでいく場面だ。
「・・・許さない・・・。」
「え?リン?ちょっと?」
「・・・まね妖怪ごときが聖一になり変わるなんて許さない!
『グレイシアベントゥス!(Glacier ventus)ー氷河の風よ!、コモーティオネ! (Commotione)ー解体せよ!』」
1つ目の呪文で氷点下20度の風が吹き荒れ、雪が積もり、火が消えた。2つ目の呪文でまね妖怪の変身が解除され、白い球体になる。 同時に吹雪がまね妖怪を襲い、箪笥の中に吹き飛ばされて雪と一緒に詰め込まれた。
ルーピン先生が止めに入ろうとしたところで凛は我に帰った。
「はっ!なんていうことを・・・。先生すみませんでした。『パック! ー詰めろ!、ムードゥス! ー整理整頓!』」
高いところで2mもあった雪が一瞬で凛が持っていたカバンに吸い込まれ、散らばって落ちてる書類が整理整頓される。
「いや、まあ、後で残るように。次はパーバティー!」
次々と生徒たちが対峙する。最後にネビルが再び対峙しまね妖怪を追放した。
なおこれ以降翌年の大イベントまで凛は、陰でちらほら雪の女王などと呼ばれることとなる。
「お待たせ。キャラメルチョコレートだ。気分が良くなるよ」
テーブルの上に出されたカップからはキャラメルとチョコレートの香りが立ち昇り鼻腔を擽る。
カップを手にとって一口飲んでみるとキャラメルの甘さとチョコレートの苦さが良い具合に合わさり絶妙な味を出していた。
「美味しいですね。これは先生の手作りですか?」
「そうだよ。僕が自信を持って作れる数少ないものでね。」
ルーピン先生は笑いながら言った後、自分も飲み始める。
しばらくは無言でキャラメルチョコレートを飲む時間が続くが、ふいにルーピン先生が口を開いた。
「今日の授業はすまなかったね、炎に包まれていたのはサンクチュアリ・トンクスでいいのかな?」
「そうであるともそうでないとも言えますね。こちらこそ取り乱してすみません。」
「ところで君はあの時炎の中の彼をサンク、ではなく他の呼び方をしていたよね?」
「それが先ほどそうであるともそうでないとも言える、といった理由です。それ以上その件について話すのは大変申し訳ありませんがお断りさせていただきます。ちなみにこの件をサンクに問いただすのも無意味です。」
「まあ、なにか事情があるとはマクゴナガル先生から聞いてるよ。まあ、なんにせよトラウマのような記憶を引っ張りだしてしまったわけだ。改めて謝罪させてほしい。」
「あれはトラウマではなく、教訓とか決意、喪失感という類のものです。まああのシーンはたまに夢に見るので先生が気になさることはありません。せっかくまともな闇の魔術に対する防衛術が来たんですから。」
「そう言ってもらえると助かるよ。でその闇の魔術に対する防衛術の先生として君に2つ聞きたいことがあるんだけどね、まずまね妖怪に対して使った呪文の2つ目はなんだい?これまで見たことも聞いたこともなくてね。」
「あれは冬に日本へ行った時に開発した呪文です。日本では魔法使用に年齢制限は害悪となるという方針のもと魔法教育が展開されていますので。」
「詳しく聞かせてもらえるかな?」
「はい。通常まね妖怪に対するには『リディクラス』の呪文を用います。これはまね妖怪の存在意義が人を怖がらせることにあり、それが果たせなくなった時点で死ぬという現象を利用しまね妖怪に怖がるものを錯覚させることでまね妖怪を変身させられるというものです。
ところで授業の時にハーマイオニーが指摘した通りマグルのデジタルカメラで撮影したところ撮影データは変わらないものの見る人によって見えるものが異なるという結果が先日の合同研究で明らかになりました。
以下デジカメと略しますが、デジカメは実体空間を写し出すのに対し私達人間の目には情報空間を介してうつります。
基本的に実体空間と情報空間は一致しているので普段は意識できません。
まね妖怪の場合では変身術とは異なり実体空間はそのまま、情報空間を書き換えることで相手の怖れるものに変身しているのでどちらかというと幻術と呼ぶべきですが、とにかくそれによってデジカメ写真のデータは変わらないのに見えるものが異なるということが起こるわけです。
先ほどの『コモーティオネ』は解体魔法で、対象の情報空間と、それに加えて情報空間と実体空間の2者を不一致させているパスをクリアするものです。
この魔法の難点を挙げると、この魔法には実体空間における座標がわかっている必要があることです。つまりまね妖怪の場合、たまたま実体空間と情報空間での座標が一致しているため術を作用させる対象座標を決定できました。
一方で例えば日本に伝わる魔法である『纒衣』のように座標がずれている場合は使えないということと、
まね妖怪に使う場合変身解除できても根本解決にはなっていない、ということです。」
「なるほど。しかし何故論文が出るより先に結果を知っていたんだい?」
「日本に、共同研究に加わっている友人がいるんです。合同研究が行き詰まってたみたいなので適当にネタ振りしたらいつの間にか日英合同研究の研究対象になっていたわけですが、まあ、というわけで発案者がデータを持っていてもおかしくないですよね?」
「なるほど、大変勉強になったよ。ありがとう。そんな新しい概念についてそこまで理解してさらに新たな魔法を開発するとはすごいね。」
「そう言っていただけると光栄です。ですがまだこの魔法は未完成です。できれば先生とそれからダンブルドア先生の前で再び実践して改良したいのですが先生からダンブルドア先生に取り計らってはもらえませんか?」
「わかった、頼んでおくよ。では、2つ目だが、その後ろの人形たちは君が操ってるのかい?」
有希と尚也はババ抜き、かなちゃんは酸塩基中和滴定実験なんか始めてる。どっからそんなもん持ってきたんだ・・・。
「いいえ。ていうか、かなちゃん何やってるのよ。」
「酸塩基中和滴定実験だよ〜。」
「こんなところでやったら危ないでしょうに。」
「大丈夫だよ、人畜無害な最終決戦兵器作成が目標だもん!」
「んなもん作んなくていいから、有希と尚也も止めてよ。」
「無理。」
「うわ、断言するし・・・。」
「・・・では生きてる、ということかい?」
「厳密には違いますがだいたい合ってます。既にダンブルドア先生やマクゴナガル先生からお聞きではないかと思うのですが。」
「うん。ある程度のことはフリットウィック先生やマクゴナガル先生から聞いているよ。でも僕としては何か・・・そう、革新的な魔法か技術が使われているんじゃないかって思っているんだ。さっき聞いた解体魔法のように。」
「せっかくのご期待に添えなくて心苦しいのですがすべて既存技術の組み合わせです。もっとも人形を作る、という強い意志がこれまで思いつかなかったような技術の組み合わせを生んだわけですが。」
「ふーん、僕の思い過ごしか。ああ、もうこんな時間だ。」
「そうですね、そろそろ寮に戻ろうと思います。3人とも片ずけ手伝って。」
有希を通じて先生を見ていたが、あまり納得しているようではなかった。アリスの闇の魔術に対する防衛術の授業は明日らしいから合わせて判断するのだろう。
「ほう、解体魔法と彼女は言ったのかね?」
「ええ、なんでも日本に、日英合同研究に加わっている知り合いがいるとかで。自作魔法だと言っていました。」
「リーマス、その論文を読んだかね?」
「いいえ、まだタイトルしか。」
「わしも昨日読み終えたばかりなんじゃが、まね妖怪の変身の原理についてそこまで詳しい明快な説明はなされてなかった。」
「どういうことですか?」
「そもそも実体空間と情報空間という考え方は条件魔法という東洋ではメジャーな魔法の原理の説明として考え出されたもので提唱されたのは5年前。まだその理論は発展途上で、合同研究のメンバーでもそこまでハッキリと理解できているか怪しいものじゃ。」
「しかし彼女の原理説明によれば対象の情報空間をクリアし、同時にパスを切るということでした。これ自体は日本の呪符を用いた術式にあったと思うのですが?」
「だが、そうやすやすと杖の術に移植できるじゃろうか。まあ、まあ、彼女に今度あったら、まね妖怪を捕まえておくから近いうちに具体的な日取りを伝えると伝えてもらえんかの?」
「分かりました。」
「さて、それよりもより注意を要するのはアリスとリンの人形たちじゃ。何か新しい情報はあったかね?」
「いいえ、フリットウィック先生やマクゴナガル先生、ダンブルドア校長が聞いたこととあまり変わらないかと。しかし、それほどまで彼女たちを警戒する必要があるのですか?確かに他の生徒と比べて色々飛び抜けてはいます。しかしながら、校長が言うほど危険とは思えませんが?」
「わしとて生徒を疑うようなことはしたくないが、しかし彼女達が他の生徒と比べていささか特異であるというのも事実じゃ。
それにあの人形については十分注意を払う必要がある。
本人達は既存の魔法を組み合わせた特別な術式を使用していると言っていたが、そのぐらいであの完成度の人形を作るのは無理じゃ。
もしそれが可能ならば過去多くの魔法使いが実現させているじゃろう。
少なくとも魂か生命に関する高度な魔法が使われていることは間違いないと考えておる。」
「魂に関する魔法もピンキリですが、秘匿度は高いはず。
たしかにリンの恋人のサンクは探偵として有名ですが彼女たちが都合よく必要な文献と研究場所を見つけられるものでしょうか?」
「わしも最初はそう思っておったが、可能性だけを突き詰めるならばいくらでも選択肢は存在するのじゃ。
とにかく今は情報が少なすぎる。ルーピン先生、マクゴナガル先生、彼女たちを監視してくれ。
彼女たちは聡いし感覚も鋭いから監視してることにはすぐに気がつかれるだろうから気が向いたとき程度で構わん。」
「分かりました。しかし、貴方ほどの方が彼女達をそこまで警戒する理由はなんですか?」
「……似ているのじゃ。彼女達の知識の探求のあり方じゃが、それが過去に見たある者の姿に近く感じるのじゃ。
細かいところで見れば明確に異なっているのじゃが、全体を通して見ると限りなく近い。一歩間違えれば重なってしまうぐらいには近いあり方じゃ。
それに加えて今回の人形の件じゃ。魂に類するもの魔法は総じて闇の魔術に関するものが多い。
彼女達がそのような魔術に手を染めているとすれば、あの者と同じようになってしまう可能性とてありえる」
「少なくともリンに関しては、心配はないかと。サンクとは生徒達の言葉を借りるなら熟年夫婦、ですし。
まね妖怪の授業で2人に対しとった姿は、お互いが炎に焼かれる姿。
それに対してリンは『教訓とか決意、喪失感という類のもの』と言っていました。過去に2人を深く結びつけるような何かが起こったとみてまず間違い無いですし。」
「その点でアリスはより大きな問題と入れるじゃろうな。付け加えるならば、彼女は相手、特に我々大人と話す際には必ずといっていいほど視線を合わせんのじゃよ」
「それは……まさか開心術を警戒しているということですか?」
「恐らくの。閉心術が使えぬ者にとって相手の開心術を回避するのに最大の効果を発揮するのが視線を合わせないことじゃ。彼女は大人と対面するときは視線を一度たりとも合わせようとわせん。少なくてもわしの知る限りではの。それはつまり、視線を合わせることで心を覗かれることを恐れているとも解釈できる。」
「ちょっと待ってください、リンやサンクチュアリーにはそういった素振りは見られませんがそれはどう解釈するのですか?」
「彼らは普通の十代ではない。もちろん、探偵をやっている、という意味ではないぞ。昨年、彼らはこう言っていた。
『私達には生まれる前の記憶があります。と言ってもこの言葉を額面どおり受け取らないでくださいね、嘘はついていませんがイコール真実ではないですから。』
その時わしは彼らに開心術を用いたんじゃが、なにも読み取れなかった。心に押し入ることは出来るのに、まるで野生動物に開心術をかけたような感じじゃった。」
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
4巻 : 炎のゴブレット
「例のあの人」が復活に向け動き出した。
マグルの不審死、クィディッチワールドカップでの騒動に隠れたもう1つの騒動、事態は怪しさを増していった。
そんななか、ホグワーツでは三大魔法学校対抗試合が始まろうとしていたが、それを利用しようとする者達の秘密工作がリンによって浮き彫りになった。
第一の課題
いよいよ出番が来た。とりあえずハリーとアリスのおかげで人形を呼び出すのは問題ないらしい。これなら楽にクリア出来そうだ。
ホイッスルが聞こえたので競技場に向かう。緊張?それは楽しむものでしょ?
目の前の洞窟を抜けるとドラゴンが見える。大小様々な岩でデコボコした地形だ。
競技場を囲むように円形に観客席がある。昨晩会場に潜入したときと変わっていないようでひとまず安心だ。
「アクシオ、ドールズ!アクシオ、ピアノ! ー人形たちよ、ピアノよ、来い!」
ドラゴンは威嚇しながらも中央に留まっているので、その隙に、競技場外に待機させていたドールズを呼び寄せ呪文で呼び出す。
魔法で呼び出すのは、武器は杖一本だけということを考えて難癖を付けられないようにするためだ。
15秒もせずにピアノと人形達がくる。なんでピアノに乗っかってるんだ、人形達よ・・・。
呼び寄せたのは、有希・尚也と、かなちゃんだ。たとえ前世でこんな事態になっても彼らを真っ先に呼ぶだろうし。
「有希と尚也は近くで陽動を、かなちゃんは遠距離からいつも通りよろしく」
指示を終えたので次はピアノの設置だ。幸い平らな岩があったから、整地しなくてすむ。
「アビジェンディス(Abigendis)! ー追い払い!、インパーピアス! ー防水・防火、アエスチーユス! -耐熱せよ、ソーラス! ー響け!、プロテゴ トタラム ー万全の守り」
そうこうしてるうちにも、人形たちは攻撃を開始している。
かなちゃんはちょこちょこ飛び回りながら麻酔針を連射してる。
やたら明るくなったり暗くなったりとチラついて見えるのは、有希と尚也の仕業だ。
ある種の催眠効果を今回は狙うので、相手の脳の正常な動作を奪うのが先決だ。
「ヌーベス スパラグント!(Nubes spargunt) 雲よ展開せよ!」
あたりが暗くなる。多少暗いほうが、催眠効果が得られやすい。
今回は雨が降るとドラゴンが暴れかねないのでちゃんと強さは調整する。
しかし流石ドラゴン、この程度ではピクリとも動かない。
ここからが本番だ。
「ギュデート・イトゥムプパ! -踊れ、石人形!、ドゥコアオルビス(Duco a orbis)! ー円を描け!」
周囲の岩が次々大人ほどの大きさの石人形に変身しドラゴンの周りを円を描くようにグルグル回る。
ドラゴンが放つ炎で幾つか崩れ落ちるが生産の方がはるかに上回ってる。この間も人形達の攻撃は継続中だ。十分溜まって来たところでフェーズ3だ。
「フェーラ! ー巻け!、メタモロフォシス スチール(Metamorphosis Steel)! ー鋼になれ!、インペディメンタ! ー妨害せよ!、ステューピファイ! ー麻痺せよ!、アトミック フレア(Atomic Flare)! ー太陽面爆発!」
空中に出現したロープがドラゴンに巻きつき、即座に鋼へと変身する。
妨害呪文と失神呪文が鋼を駆け巡り、鋼の輪をガイドラインに巨大な炎の渦がドラゴンを取り囲む。いわゆる、「火を以って火を制す」というやつだ。人形達も一斉に失神呪文を放つ。
ドラゴンが炎を放つがますます取り囲む火が強くなるだけだ。苛立ちが見える。ここまで来たらフェーズ4だ。
「ルーモス! ー光よ、ノックス! ー闇よ、ピエルトータム ロコモーター! ーすべての石人形よ動け」
人形達に合図を送ると、有希は認識障害魔法でドラゴンに卵の位置を錯覚させ、尚也はフィールドの整地、かなちゃんは鋼の輪を浮遊呪文で少しずつピアノに近づける。
私はピアノで曲を演奏する。曲名は「天空の夜明け」だ。
ドラゴンは炎やら失神呪文やらがついた鋼の輪や、石人形が後ろから迫ってくるので知らず知らずのうちに卵から離れていく。ただ、ここで誤算が発生する。
「いや、なんで寝だしたし。」
そう、ピアノの音で何故かドラゴンが寝だした。
個人的には怒りを増長させて錯乱し、失神呪文が効いてくれるというのを狙っていたのだが、嬉しい誤算だ。
何なの、「天空の夜明け」が気に入っちゃったの?ともかくフェーズ5だ。
「ディセンド! ー落ちろ!、フィニート! ー終われ!、インペディメンタ! ー妨害せよ!、エンゴージオ! -肥大せよ!、エムイベート! -鎖になれ!、ステューピファイ! ー麻痺せよ!」
まず鋼の輪を地面に落とし、炎の渦を消す。次に石人形を大きくしてさらに鎖にする。最後にドラゴンの目を狙って失神呪文を放つ。有希に加え尚也も失神呪文を放つ。ようやく失神呪文の効果が現れだし、音楽が止んだときに動こうとしたものの、動きが非常にゆっくりだ。卵を取るなら今か。
かなちゃんにリンクし、私自身に浮遊呪文をかけて卵のところまで移動する。デコボコのところを歩きたくないし。
無事に卵をとったところで、集中力が切れ会場の歓声がうるさいほどに聞こえ出す。
「やりました! ミス・リン! 変身術と音楽を用いて巧みにドラゴンを撹乱して見事卵を手に入れました!」
しかしそんな事に構っている暇はない、とても疲れた。
とりあえず人形達を呼び出し、有希にピアノの輸送を頼みつつ、私自身にも浮遊呪文をかけてもらい、救護所に向かう。
流石に使った魔法の数が多すぎる、しばらく動きたくない。
救護所につき、マダム・ポンフリーから回復薬をもらい、飲み干す。
そこにマクゴナガル先生と、先に競技を終えたクラム・ハリー・アリス・ロン・ハーマイオニー・ジニーそして何故かジョージとフレッドが来た。
「ミス・リン、ミス・マーガトロイドもそうですが、あなた達が、こんなにも変身術が得意だったとは知りませんでした。
グリフィンドールの選手が2人とも見事に卵を取る事に成功する事が出来た事を誇りに思いますよ。ああ、それより怪我したところはありませんか?」
「ありがとうごさいます、怪我は大丈夫ですが、とにかく寝たいです。」
「まあ無理もないでしょう。点数が出たらゆっくりとお休みなさい。」
といって救護所を出ていく。次の瞬間。
「凄かったわ、あの大きな火の渦は何?」
「あれは最高だぜ、なあ?」
「ああ!すげぇワクワクしたぜ!」
「それにしてもまさか競技中までピアノを弾くとは思わなかったわ」
「ゔぉくより派手でよかった」
「なんかみんな僕より魔法が上手なのではと思えてきたよ・・・」
「セドリック、そんな事言ったら僕はどうなのさ」
・・・いや、一気に言わないでください、聞き取りきれないし。
「セドリック、私は得意分野で攻めただけで、咄嗟の判断力を含めた総合力では全然勝てないわよ。ハリーだって、クィディニッチという得意分野を生かした訳だし。」
「しかし私も人形使いだけど、ずいぶん使い方が別れたわね。」
「そうなの?後でゆっくりリプレイ動画を見せてもらうわ。」
「みんな、そんながやがや寄ってたかって話しかけてる間に得点発表が始まるよ」
「えっ!?本当?ジニー、グッジョブよ。」
競技場全体が水を打ったように静まり返る。
皆が皆、審査員席にいる審査員の方を見つめていた。
最初にマダム・マクシームが杖を宙に掲げる。その杖先から銀色のリボンのようなものが噴出して形作っていき、“8”を描いた。
続いて、クラウチ氏が杖を掲げる。杖先から黄色い光が噴出し“8”を描く。
ダンブルドア校長は赤い光の帯を出して“9”を描いた。
「ああ、これは競技時間の長さで減点を食らったのかな」
「多分そうだ」
バグマン氏はクラウチ氏と同じ黄色の光を噴出させて“10”を描く。
残るカルカロフ校長の杖先に、競技場中の人間の視線が集まっていく。カルカロフ校長は自分に集まる視線など気にしていないかのような平然とした動きで杖から灰色の光を噴出させて、“7”の数字を描いた。
「7点?ハリーとアリスには4点しか与えなかったのに、この差は何なんなのかしら?」
「きっとこれ以上贔屓してもクラムの1位が無理だからまともにつけたんだろう」
とジョージが言うと、
「流石、卑怯者で依怙贔屓のクソッタレだぜ」
ロンが喚く。
「42点、私と同点で1位ね、おめでとう。」
「ありがとう。ふゎゎ、眠い、寝ていい?」
しかし、
「・・・なお選手は試合前の天幕に再度集合してください。」
「どうやらもうしばらくお預けらしいわね。」
「ええ〜、そんな〜・・・。仕方ないなぁ、アリス、チョコレートちょうだい」
「持ってないわよ。」
「じゃあイチゴのショートケーキ、ひとかけら。」
「だからないって」
「ならば、チョコレートケーキ、ホールで」
「リン、ごねても結果は変わらないと思うよ」
「ゔぉくもはやく行くほうがいいと思う」
「むぅ・・・、分かったよ。」
仕方が無いからぞろぞろと天幕に向かう。
「相変わらず話に割って入れないのな、サンク。結局一声も発しなかったし。」
「仕方ないさ、フレッド。リンは昔っから、ああなんだから。」
「いの一番に声をかければいいのに。」
「無駄だよジョージ、アリスとハーマイオニーがいるんだ、さらっと流されるに決まってる。」
「またそんなこと言うし」
「ロン、俺はのんびり話がしたいのであってそれが今である必要はないさ。どうせ後で二人っきりになれるんだし。」
「まあ、そこが、我らがローニー坊やとの差だよな。」
「ローニー坊やも少しは見習え。」
「うるさい!」
眠れぬ夜の救世主
「全員、よくやった!」
フラーとセドリックと話してしていると、バグマン氏が弾むような足取りで天幕へと入ってきた。
「さて、では手短に話してしまおうか。
第二の課題まで君達には十分な休みが与えられる。第二の課題が行われるのは二月二十四日の午前九時半だ。
そして、その第二の課題の内容だが、君達が獲得した金の卵がヒントとなる。
よく見てもらうと蝶番があって開くようになっているのがわかると思う。その中にあるヒントを解き明かすんだ。
それにもとずいて、第二の課題が何であるか、必要な準備は何かを考えること! 卵はなくさないように注意すること!
それから、今回の競技の録画がこの後食堂で放映されるので観たい者は見る事!
何か質問はあるかな? 大丈夫か? では、解散!」
やっと終わった。
外に出ると聖一がいた。
「終わったか、凛。今日はお疲れ。無事課題をクリアできて何よりで。」
「本当につかれたよー、なのにサンクは声かけてくれなかったし、かといって寝られないし。」
「二人きりの時は聖一、だろ?」
「あ、うん。」
と言いながら抱きついたら、なでなでしてくれた。
なでなでされてたら眠く・・・なってきた。
食堂に向かおうとすると、アリスとジニー、パドマ、アンソニーがいた。
「相変わらず、お熱いわね。」
「み、見てたの?」
「うん。」
「気がつかなかった・・・」
「あれ?てっきり気がついてると思ったから俺もキスはしなかったのに。違ったのか。」
「疲れてるのよ!」
「リンの照れ隠しかわいい!」
なんか抱きつかれた。
食堂に向かう途中、ハリーがリータ・スキーターに絡まれているのを見かけたが、気にすることでもないと思い見なかったことにした。
・・・待てよ、この後リプレイを見るということは、まだ寝られないの?私。
アリスと一緒に食堂でリプレイをみて、同時に食事をして、となんだかんだしていたらもう夜10:00だった。
いい加減寝たいしそろそろ寮に戻ろうか、と思い歩きだしたところで聖一と再会した。
「凛、今寮に行かないほうがいいぞ。」
「どうして?私、眠いからいい加減寝たい。」
「ハリーを中心にどんちゃん騒ぎ。」
「ああ、なるほど。うーん、どうしよう・・・」
「それでな、俺に考えがあるんだ。」
何だろうと思い、ボケボケとついていった先は・・・。
「ああ、そうか。秘密の部屋の拠点なら静かか。」
「本当に疲れてるのな。」
「うん。じゃあ寝るから適当に起こして。」
もう限界!そこでぷっつり意識が途絶えた。
「うん。じゃあ寝るから適当に起こして。」 「えっ、いや、着替えろ・・・ってもう寝てるし・・・。」
どうすんだよ、とかぶつぶついいながら手際よく服を着替えさせる。どーせシワになったら怒り出すんだ、いい加減その位は学習する。
すぅ・・・。
やっぱり寝顔が1番かわいい、そんな気がする。
まだ魔力消費を減らす研究は始めたばかりだし、あれだけ魔法を使えばそりゃ疲れるよなー
そんな風に寝顔を見ていたら、いつの間にか寝てしまっていた。
休息も束の間
何か小鳥のさえずりがする・・・さえずり・・・?
「あ、そっか。秘密の部屋拠点に来てたんだっけ。今は・・・6:00か。」
もぞもぞと起きると腕が何かに当たる。
「起こしてって頼まれた側がまだ寝てるってどうなのよ、起きろ!聖一!」
「・・・だがしかし断る。」
「よし、起きたね。」
「もう少しゆっくりするという発想はないのか?」
「温泉でも入ったほうが疲労回復には効果的よ。ね?」
「「ね?」ってあのな、なんで一緒に入るのが前提なんだ。」
「あの卵の解析、さっさとやらないとね。」
「あ〜、はいはい。」
さっさとお互い着替える。
原作通りなら水中人の声がするはずなので確認には卵と自分の耳の双方を水につけるのが手っ取り早い。
えっ?裸で混浴?なわけないでしょ。お風呂の中で着る用の浴衣を着てます。
一足先に、お湯につかる。やっぱりこういう時は、温泉はいいよね。
「おい、ゴーグル忘れてるぞ。」
「あ、ごめんごめん。ありがとう。」
「じゃあ、さっそく。」
一緒にゴーグルをした状態でお湯にに潜る。水中で卵を開くと・・・。
「良かった、同じ歌ね。」
「しかし原作と同じ難易度とは限らないぞ。」
「まあまあ、いいじゃない。」
ゴーグルを外しながら言う。
「それはそうと凛、2つ疑問があるな。1つ目はなぜドラゴンが眠ったか。」
「きっと私の演奏が気に入って・・・」
「アホ、んなわけあるか。俺はお前が放った魔法の幾つかが干渉したんだと踏んでる。どう思う?」
「魔法の干渉もそうかもしれないけど忘れてない?私たちが呪文を声に出すのは、1つは魔法式のイメージを鮮明に呼び出しやすくなるからだけど、もう1つの理由はその声そのものに魔法式の最適化効果があるから。つまり、ピアノ演奏がなんらかの干渉をした線も、なきにしもあらずでしょ?」
「ふむ・・・。まあ干渉によるものと仮定すると、メインは有希が放った認識障害魔法だろうが、どう干渉したら眠ったのか疑問だな。」
「今度実験してみましょうよ。ところでもう1つは?」
「より深刻な話だ。カルロフ校長の採点、ハリーとアリスは4点にもかかわらず凛、お前には7点だ。」
「ロンはこれ以上贔屓してもクラムが1位になれないからだと言っていたけど。」
「それだと・・・」
「「まだ第一試合だという事に対する説明になってない」」
「ということだ。ってなんでハモった?」
「そっちこそ。これは調べないといけないけど、彼にどういう得があるのかな?そこが読めない。」
「とりあえず、ありえなさそうな所からいくか。例えば、凛の裏の評判を聞きつけて身を隠す事態になった時、協力を要請したいから、とか。」
「前世ならともかく、まだ私の情報網は大したことないのに、なんでそんなに裏で評判になるのよ。ところでそもそも、この得点はカルロフの自らの意思によるものなのか何者かに強要されたのか、どっちだろう?」
「あと、近視眼的に見た時にそれは自分のためか、誰か他の人の為か、という話もあるな。」
「case1、炎のゴブレットに追加で3校も多く対象校を認識させるほどの術師が、カルロフを服従あるいは錯乱させている。」
「その場合はその犯人Xの目的が読めないな。凛を優勝させようとしてる事になるけど。」
「原作ではムディーに変身したバーチ・クラウチ・ジュニアがハリーを、2次原作では加えてアリスをヴォルデモート復活の場に優勝杯を触らせることで連れて行くことだったのよね。けど1人2人ならともかく、3人も優勝杯で連れて行こうとするかな?」
「念のために言っておくが、2次原作でも結果的に3人運んでるぞ。」
「それは偶然じゃない。ということは、・・・。」
「優勝させることで何かによって連れて行こうとしている。」
「まあ・・・情報不足の中での推理なんてものほど当てにならないものもないんだから、お互い調べよう。ね?」
「だな。ところでそんなに長くお湯につかってて、のぼせないのか?」
「そっちこそ。」
のぼせかかってたので、さっさと上がる。水分補給の後体を洗い、秘密の部屋の拠点に戻る。もう7:30だ。お腹すいた。
第二の課題
「リン先輩!早く起きてください!」
「あと30分だけ・・・」
「何寝ぼけてるんですか、試合まであと15分ですよ!」
「15分・・・ん?15分!?まずい!」
「だからさっきからそう言ってるじゃないですか。」
「あれ、コリンだ。ううっ、面目無い。とにかく急がないと。」
「大丈夫、着るものは全部サンクが用意して受け取ってます。はい。」
「ありがとう・・・着替えてくる。コリンも早く観客席に。ハリーの応援に行くんでしょ?」
「はい。では本当に急いで下さいね。」
まずいまずい。あと15分で試合とは。
しっかし、聖一のやつ、着せたい服ってこれか。いやさ、確かに作戦通りなら水に濡れることはないからいいんだけどさ。
会場に着いた時には試合まであと5分になっていた。
どうもハリーが来てない・・・と思ったら来た。
試合開始の合図がでる。ハリー以外は我先にと水に潜っていく。ハリーは何やらもたついたあと水に潜っていった。
次第に会場のざわめきが大きくなる。私が立ったまま何もしないからだろう。審査員のルード・バクマンが話しかけてきた。
「何もしないと棄権扱いになるが、構わないのかね?」
「バクマンさん、これも作戦の内です。勝手に棄権にしないでいただけますか?まあ、あと2分くらいですかね。」
「それならいいが。健闘を祈るよ。」
さすがに審査員にも疑問を持たれているようだ。そろそろ構わないだろう。
「ヌーベス スパラグント!(Nubes spargunt) 雲よ展開せよ!インフェルノ!ー氷炎地獄!」
雲が展開しあたりに冷気が漂う。水面に熱気と冷気の境界線が敷かれ、水は冷やされ、空気は熱される。徐々に水が氷に変わっていく。湖の一部を凍らせた。
「セクタムセンプラ!切り裂け!、ウィンガーディアムレビオーサ!浮遊せよ!」
できた氷を切り出し、湖面から出す。
「アグアメンティ!水よ!ニブルヘイム!叫寒地獄!」
切り出した氷に吹雪が襲う。空気中の水分はおろか、窒素すら個体となり氷柱を大きく成長させる。
魔法により収束され出現した水も凍結の例外ではない。湖の最も深いところは水深50メートルになる。なのでそこまでの高さに成長させる。
「ウィンガーディアムレビオーサ!浮遊せよ!フェルクシィバス!物体操作!」
概ね出来上がったところで4本の氷柱を組み合わせ中空の円柱型氷柱を作る。その前の魔法は継続中なので直ちにそれらは一体化する。
「アクシオ ドールズ!人形たちよ来い!スィーブサリエンド(Sive saliendo)!跳躍せよ!」
人形たちを呼び出しつつ、跳躍して氷柱の上に飛び乗る。
ドールズに浮遊魔法をかけてもらい氷柱ごと移動する。自らを動かすのは浮遊魔法の術者からの相対距離によって物体を動かすという性質上出来ないのでこういう形をとる。
「クワーリル!捜索せよ!」
高位の魔法師になればこの魔法による捜索を妨害したり偽の情報を渡すことができる。またある程度範囲を絞れてないと捜索できない。例えるならサーバーへのリクエストと応答、それのタイムアウト時間みたいなものだろうか。
今回は誰を探すかも、だいたいどの辺りかも分かっているので支障はない。だから
(へぇ、あそこか。氷柱を高めにしておいて正解だったわね)
ほぼ湖の最深部にいることも分かった。
そのまま上空に飛んでいき、氷柱をわずかに水に沈める。そして氷で蓋をしてそのまま一気に沈める。
湖底に氷柱が達したところで硬化魔法をかけ、氷柱を湖底に固定し、聖一がいるところまで氷の廊下を作る。
本来精密な制御と高い魔法力が必要だが今回は手抜きする。
つまり聖一の手前まで氷柱を伸ばし、それをくりぬく。こうすれば高い制御力はさほど必要ない。
作った氷の廊下を今度こそ高い制御力で伸ばし、旱魃の呪文で、水抜きしたところで聖一が目覚めた。
「聖一?大丈夫?体調に何か問題はない?」
「大丈夫だ。それよりその服を着てくれてよかった。」
「言えば何時でも着てあげるのに。今度からは不意打ちなしでちゃんと頼んでよね。」
「はいはい、分かった。それよりも今は。」
「そうだったわね。アグアメンティ!水よ!ニブルヘイム!叫寒地獄!ボンバーダー!爆発せよ!」
私達の身長より少し高いところに氷壁を作り、それより上の氷柱を爆発して切り離す。そして硬化魔法を解いて浮力により上昇する。
水面に浮けばあとは簡単だ。氷柱の一部を爆破して空気孔を作り(酸欠防止)人形たちに命じて岸辺まで運ばせるだけだ。
かかった時間は、凍結に他の選手が巻き込まれないようにするための待ち時間8分と氷柱生成にかかった時間5分、移動にかかった時間3分、そこから救出まで4分。計20分での救出に成功した。
そう、このまま何もなければ。
水面から救出要請の魔法が飛び出す。慌てて水中を探るとアリスが大イカに襲撃されている。
「聖一、手伝って!」
「言われなくても。フリジアチーユス!耐寒せよ !ノゥトアクア・プレスィリア!水圧よ軽くなれ !ソレバァト・シルエミニ!耐圧せよ!インパーピアス!防水防火!リン、飛び込め!」
「うん。」
アリスは人魚に変身する呪文をかけているようだが、そんなものは必要ない。大雑把な加速は聖一が遠隔でやってくれるし、細かな移動は作用反作用の法則の応用で十分だ。
かける魔法は決まっている。精神干渉系魔法で精神そのものを凍りつかせる。その名は
「コキュートス!精神停止!」
アリスを襲おうとしていた大イカの行動が止まる。と言っても生存に必要な活動、例えばアポトーシスやオートファジー、血流循環は正常に動作する。
とりあえずアリスの元に向かい、私にかけられてる泡頭呪文の空気をアリスの耳にくっつけ、アリスに伝える。
「アリス、残り時間は35分、大イカは一時的に精神を凍結しているから襲うことはない、大イカの事後処理は私に任せてさっさと行きなさい!」
「リンはどうしてここに?」
「競技を終えて岸辺に戻る最中で救出要請の呪文を見たからよ。」
「え?もう終わったの?」
「アリス、なにも水中が舞台だからって水に潜る必要はないのよ。いいから早く行きなさい。」
「・・・分かったわ。」
そう言ってアリスは去っていった。
すでにフラーは救護班が救出している。
(大イカの処置をどうするにせよ、とりあえず水面に出ましょう。どうせこの場面は会場に映し出されているのだし)
とりあえず水面に出るのだった。
岸辺に辿り着いた私はいきなり審査員に囲まれた。
「リン、水中で何があったか聞かせてくれんかのう?」
「ダンブルドア校長、競技を終えた選手にのっけから質問攻めですか、審査員としてあるまじき行為ですね。今すぐ審査員を辞退されては?」
「リン、そう言わず説明してくれないか?審査に必要なんだ。」
「へぇ?審査に必要、ね。リアルタイムで映像を見ていて、それでなお不足とは審査方法に問題があるんじゃない?
もともとアリスを大イカから救った件については話すつもりだったけど、今の話を聞いて気が変わったわ。
ああ、そうそう。あの大イカ、何者かに操作されていた可能性があるから、せいぜい気をつけることね。
狙いは言うまでもなくアリス。ダンブルドア校長には、アリスを生徒として十分に保護する事を期待しています。では救護所に行きますので。」
「待ちなさいリン。」
「あ、そうそう、サンクを私の断りもなく競技に利用した件については後ほど詳しくご説明いただけるものと思っています。」
人助けをしたのにあれこれ言われる覚えはない。今はアリスやハリーを応援したい。そう思って医務室という安全地帯に逃げ込んだ。
どうやらアリスにやたらと魔物が襲いかかっている。大イカだけでは飽きたらなかったのだろうか。
しかしアリスを妨害するには不十分のようだ。この様子なら3位は確定だろう。
ハリーはもう人質のところについたようだ。
そして20分後。
「ところでなんでハリーはなんで人質のところにずっといるのかなぁ?」
そう。ずっと人質のところを離れないのだ。そうしたら救護所で治療を終えた(実質検査だけだが)聖一が解説してくれた。
「ハリーは正義感が強いから、友達であるハーマイオニーやチョウ、同じ選手の妹のガブリエルを見捨てられないのだろうよ。
あれはあれで大事な価値観だろう。工藤新一に似ている面もあるな。」
「ああ、言われてみれば。工藤の方が頭は切れるけど。」
そうこう話している内にアリスがネビルを救出、すぐにチョウもセドリックに救出された。
しかし、まだハリーは動かない。
アリスとセドリック、ネビル、チョウが岸辺に戻ってきた。流石にアリスに詰め寄るような真似は審査員一同しなかったようだ。
アリス達が救護所から出て私達と同じところに来た時、クラムがハーマイオニーを救出した。しかしハリーはまだ動かない。
ハーマイオニーが私達のところに来た時アリスが尋ねた。
「私ハリーにさっさと水面へ上がるように言ったのに、なんでまだ上がらないのかしら?どこか怪我でも?」
「違うわよ、ね?サンク。?」
私にしたのと同じ説明を聖一がする。
「まったくもう、ハリーったら。」
「まさかハリー、あの歌を真面目に捉えてるんじゃ?」
「いやいや、流石にそんな事は・・・あるのか?」
「あり得ると思うわ。」
「あやや・・・。ネビル、ハリーは水へ入る前に、何か緑色の海藻状の物を食べていた。その結果あの水中に適した体を得ている。何を使ったか分かる?」
「多分鰓昆布だね。あれだけで、泡頭呪文、耐圧呪文、水中での移動速度上昇、耐寒呪文の役目を果たしてくれる。」
「効果時間は?」
「1時間。だからそろそろ不味いはず。」
「あ、ハリーが動き出した!ロンとフラーの妹のガブリエルも一緒に水面を目指してる!」
「でも間に合うかしら?」
「それについては大丈夫じゃないかな?浮力上昇呪文の練習をしていたようだし。」
何とかハリーは水面に上がれたようだ。ガブリエルは泳ぎが苦手らしく、ロンが手伝ってる。
ハリーも治療を終え、結果発表となった。
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
5巻 : 不死鳥の騎士団
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
6巻 : 謎のプリンス
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
Harry Potter
7巻 : 死の秘宝
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
現代魔法と呼ばれる分野を開拓した二人はとある事情で半不老不死状態になっていた。
四葉家に生まれた一人の破壊神の成長にどう関わるのか。
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
入学編〈上〉
TODO
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
入学編〈下〉
TODO
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
九校戦編〈上〉
TODO
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
九校戦編〈下〉
TODO
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
夏休み編+1
TODO
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
横浜騒乱編〈上〉
TODO
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
横浜騒乱編〈下〉
大亜連合の工作員の活動は収まったかに見えたが、ただの前哨戦に過ぎなかった。
横浜の街が戦火に飲まれる。
設定
- 15:20敵配置完了
- 15:30一校発表終了
- 15:30山下埠頭管制ビル襲撃
- 15:37襲撃
- 15:37千葉警部移動
- 15:37停泊中の偽装揚陸艦からロケット弾
- 15:43横浜市内侵攻
- 15:48VIP会議室へ
- 15:50地下通路で敵と戦闘
- 15:56一高控室集結
- 16:00三高、大型車両専用駐車場で戦闘
- 16:02十文字克人、魔法協会へ出発
- 16:03シェルター前で天井崩落
- 16:05桜木町駅広場の付近で戦闘
- 16:08シェルターに向かった直立戦車からの通信が途絶える、機動部隊上陸
- 16:09保土ヶ谷駐屯地に達也到着
- 16:09桜木町駅前広場に到着
- 16:10船到着予定
- 16:11ヘリ到着予想は1630と判明
- 16:12桜木町駅前広場の付近に敵到着
- 16:14達也、柳と合流、桜木町駅前広場へ向かう
- 16:15三高、大型車両専用駐車場で戦闘終了
- 16:33桜木町駅前広場の付近で戦闘が続く
- 16:34桜木町駅前広場に最初の北山家のヘリコプター到着達也も到着
- 16:51ヘリへ搭乗ほぼ完了、七草家のへりも到着
- 17:07深雪達をヘリで拾う
- 17:13花音たちもひろう、達也救助に
- 17:15魔法協会付近の戦線に十文字克人が合流
- 17:17中華街付近で一条将騎戦線に参加
幻想郷に伝わるスキマの急報
目覚めたら既に昼だった。聖一はどっかに行ってるのか、すでにいない。
横で寝ているアリスを起こし、ボケボケと台所に向かう。
「昨夜はお楽しみでしたね?」
「固い固い友情ですもの、当然ですよ、そうは思いません?咲夜さん?」
「冗談ですよ。お食事になさいますか?」
「お願いするわ。」
食堂に行くとアリスがあくびをしていた。
横浜の事変の幕開けはあまりに突然で
調べ始めて5分たたず、横浜中華街の周公瑾の暗躍が確認できた。その後が問題だった。
どうやら大亜連合は横浜と京都に熱核攻撃をするらしい。
最初にこの情報を掴んだのは調べ始めて30分経った頃だった。陳祥山が横浜を攻撃するらしいことがわかりその背景を調べていたのだが流石に驚いた。
どのくらい驚いたかというと、思わず倒立して部屋を歩いているところを聖一に見つかり呆れられるくらいには。
「なに、熱核攻撃を横浜と京都にだと!?」
「ええ、そうみたい。横浜への陳祥山らの部隊とは別に同じく横浜から京都へ魔法師を含む部隊が向かう予定みたい。」
「敵の第一上陸目的は対熱核兵器魔法師部隊の妨害か。」
21世紀前半にはイージスシステムやPACによるミサイル防衛システムが開発され宣伝されたが、実際には見つけても撃ち落とせるかは運次第、と言う程度のものであったことは割と知られている話だ。それは21世紀末になってもミサイル側の対ミサイル迎撃システム対策の影響もありさして変わっていない。
こうした事情と、そもそも魔法師が知られるようになった原因が1999年の熱核攻撃阻止であったことを背景に、国として成立しているところならばどこにも対熱核兵器魔法師部隊が規模の差こそあれ存在する。
「そのようね、加えて魔法協会データバンクの襲撃と人質の確保も狙っているようね。しかしなんで横浜からだけ侵入するのかしら、大阪なり神戸からも上陸したほうが効率はいいだろうに。」
「大阪神戸では周公瑾の支援が受けられないから事前工作がバレることを警戒しているんだろう。それにしても大亜連合は正気か?熱核攻撃は1999年以来のタブー。もし行えば他の国も黙ってはいないだろうに。」
「しかもおきまりの日本弱化を狙ったUSENとの同盟関係を結んだらしいのだけど、USENは熱核攻撃に気がついていないわ、どうやら出し抜いたようね。」
「USENの大亜連合交渉官ってのはそんなに間抜けで務まるようになったのか、知らなかったな。まあそれはさておき、どう対処する?」
「幸いな事に京都攻撃部隊の行動起点は横浜。京都へは横浜の外への交通封鎖で対応出来るわ。問題は横浜ね。」
「まあここで議論いる暇はないか。」
「そうね、聖一。」
「分かってる。」
そう、今は行動する時だった。まずは今回の件で既に動いている独立魔装大隊の動きを確認するのと警察の魔法犯罪対策課の動きを確認するのが先決だ。
1時間かけて調べた結果、辛うじて独立魔装大隊が誰かを人質にとるため、何らかの行動するかもしれないという予測を立てている事が分かった。しかしそんな事ではとても対処しきれない。
そこに電話が入った。
「リン、もうすぐ首相官邸につく。どこまで情報を伝える?全部話してもいいとは思うが?」
「ええ。ただ現地対応はなんとかするから外交面に専念してと伝えて。あと、11/2の国防軍の新装備テストの集合を31日午前中に完了するようにと伝言して。それから、内閣府直属の魔法師部隊予備隊の指揮権を私に、と。あと聖一は今のうちに連絡要員をよんで交渉が終わり次第」
「ああ、分かってる。さて着いた、切るぞ?」
「了解!」
これで政府としての対応はとれるだろう。
とにかく事変発生時の交通封鎖、特に京都方面と、市民の誘導のための警官の配置、外敵排除のための国防軍、港湾管制塔が機能しなくなる事を想定して武装警察への連絡。やる事は山積みだ。まずは国防軍だろうか。
「明後日のイベント、明日にずらすのは大変そうね、真夜ちゃんに手伝ってもらいましょう。」
とりあえず四葉本宅へ向かう事にした。
有能な首相ほどありがたいものなし
熱核攻撃を伝えた時の首相とその取り巻きの驚きようは凄まじいものだったが、流石常識は捨てるものと公言する首相、立ち直る速度がちがう。
「なるほど、流石リン先生、USENより先に事態を把握するとは。で、私に求めるのは外交面の対応ですかな?」
「流石話が早い。ただそれ以外にも幾つか欲しいのですよ。」
「と言いますと?」
「ひとつは内閣府直属の魔法師部隊予備隊を欲しいのです。2つ目は11/2に予定されている国防軍の新装備テストの現地集合を明日・・・というとややこしいな、10/31日午前中に完了するよう、手配して欲しいのです。」
「新装備テストの集合を?ああなるほど、核の事を言わずに済むと。」
「ええ、そういう事です。」
「分かりました。予備隊のほうは2時間くらいかかりますが?」
「構いません。それでは私は他に行くところがあるのでこれで。連絡には彼を使ってください。もちろん他の事に使っても構いませんが。自己紹介を。」
「はい、田中太郎です。よろしくお願いします。」
「聖一先生?本名ですか?」
「ええ、戸籍上では。」
「・・・聞いた私がバカでした。」
なんか諦めたような顔をしていた気もするが気にしない。次に向かうのは交通管制部だ。市民の脱出の主力になるであろう、キャビネットとコミューターの増便を要請しなければならない。
交通システムの近代化とともに、大型イベント時の混雑緩和のために、イベント会場ごとエリアごとに周囲のコミューター数を増便できるようにシステムが組まれている。これにより1週間前までに申し込めばコミューターが増便される。
しかし問題なのは明日なのだ、悠長に申請しているわけにはいかない。そこで直接ねじ込みに行くわけだ。
四葉本宅にて
四葉本宅は私の研究所から車で20分のところにある。四葉の結界境界のあるトンネルは15分のところだ。その15分の時間を利用して四葉家へ連絡をいれていた。
「葉山さん、夜分遅くにすみませんが今から真夜ちゃんに会いたいの、急用で。伝えてもらえるかしら?」
「リン先生こんな夜遅くに何事ですか?しかもいつも連絡なんてめんdと言って結界を正面突破なさるのに連絡をよこすなんて。」
「なんでこんなに酷い言われようなんだろう。だいたい私が正面突破するのは確実に起きてると・・・いやいいわ、とにかく緊急事態よ。達也くんと深雪さんも巻き込まれる可能性がある。あと6分くらいでトンネルに差し掛かるわ。」
「了解いたしました。すぐにお伝えします。幸いにもまだ当主様はお休みではありませんし。」
「あら、もうすぐ12時半よ?何をしてるのかしらね。まあ都合がいいわ、よろしく。」
まったく葉山の言いようは酷い。別に結界を正面突破してるわけではないのに。そんなの博麗の巫女とか結び離れ分つ結う代やら隙間に潜む者だけで十分よ・・・。
四葉本宅に着き、メイドの案内で応接室に向かった。私が座ると同時くらいに深夜ちゃんが入ってきた。
「真夜ちゃん、こんばんは、夜遅くにごめんね〜。」
「リン先生、今12:30ですよ?本当に急用なのですか?達也さんと深雪さんも巻き込まれると聞きましたが?」
「ええ。大亜連合の工作員が暗躍しているのは知っていると思うけど、その大亜連合、横浜と京都に熱核攻撃を仕掛けるみたい。目標は魔法協会のデータバンク。京都への対熱核兵器魔法師部隊妨害部隊も横浜から侵入するらしいわ。」
「熱核攻撃ですって!?」
「えぇ。」
「えぇって・・・。USENは?」
「もうじき内情から伝わるかと。」
「USENの反応が鈍いのはおきまりのアレのせい?」
「そうよ、おきまりの日本弱体化計画。」
「やれやれ。しかしそうなると論文コンペティションは中止かしら?」
「いいえ、それでは彼らに悟られてしまいます。それに、敵の行動開始は、発表の最中。おそらく第一高校の発表が終わるか終わらないかくらいではないかと。」
「なんでそんなことが・・・リン先生なら仕方ないか。なるほど、達也さんと深雪さんが巻き込まれると。それで私に望むことは何でしょう?」
「1つ目は敵の侵入に呼応するであろうゲリラの事前取り締まり、こちらは無理かもしれないですが。
2つ目は聖一が首相に直接掛け合ってる最中とは思いますが、11/2にある国防軍の新装備テストの集合を31日午前中に完了するように変更して欲しいということ。これは確実にお願いします。
3つ目は達也くんにこの事を伝えて警戒を求める事。
4つ目は明日の論文コンペティションで会場警備に加わる十文字克人くんと一条将輝に十文字家と一条家を経由して事態をぼかして伝える事、もちろん熱核攻撃の事は伏せて。
5つ目は、他の十師族、師補十八家、百家のうち論文コンペに参加していそうな家全てに救助目的を含む一切の横浜上空の飛行禁止。救助と称してヘリコプターでも出されたら格好の地対空ミサイルの標的になり、そのために国防軍が戦力を割かなくてはならなくなるしね。これは事変が起こってからね。
6つ目は対大亜連合強硬派を抑える事、和平交渉がおそらく始まる事になるとおもうので、茶々を入れられた挙句、戦略級魔法師の動員、特に達也くんを動員されることのないように。お願いできるかしら?」
「了解したわ。先生はこれからどちらへ?」
「横浜に。工作は現地にいた方がやりやすいですし。」
「そうですね。黒羽の皆様をお貸ししましょうか?」
「いいえ、ゲリラの炙り出しに総力をつぎ込んでください。」
「そうですか。分かりました。では先生お気をつけて。」
「ええ、もちろん。」
警視庁魔法犯罪対策課の千葉警部と独立魔装大隊の藤林響子が接触したらしい。ここは千葉警部と会うのが先決だろう。
車に乗り横浜へと向かった。
千葉警部との接触
もちろん横浜まで情報収集しながら進むわけだが、同時に千葉警部と連絡を取っていた。
無事に新橋の喫茶店で落ち合った。
「お久しぶり、なのかな?千葉警部?」
「お久しぶりです、リン先生。」
「さて、時間も無いことだし単刀直入に。明日・・・ではなくてもう今日ね、横浜の件、どこまで掴んでいる?」
「先ほど国防軍の藤林響子さんからお誘いを受けしたよ、知り合いの男の子が論文コンペティションに出る、と。」
「あら響子さんが。それで?」
「早い話が何か起こるかもしれないから武装して何時でも対処できるように、と。」
「そう、その程度ね。分かったわ、追加で情報提供しましよう。横浜に大亜連合の工作船が来て、すでに進入しているゲリラと呼応して横浜に侵攻、目標は魔法協会のデータバンクと人質を取ること、将来の戦力低下を狙った論文コンペの襲撃のようです。まあ他にもあるようですが。」
「ずいぶん事態が大きいですね、響子さんの警告を受けてそこそこの規模で動くつもりではいましたが。」
「そこそこ、では不十分でしょうね。これでもかなり事態を矮小化してお伝えしているのですから。私自身も内閣府直属魔法師部隊予備隊を借りて動くつもりですし、ゲリラの炙り出しに四葉が動いています。また会場警備にあたる生徒の警備隊のメンバーの十文字克人、一条将輝には師族会議経由で警告がまもなく四葉から発せられるようです。」
「四葉が・・・、しかしなぜ四葉が?」
「私がお願いしてきました。」
「はぁ、流石はリン先生と言えばいいのか・・・。」
「なんか褒められてる気がしないわね、それでどの程度の規模で動けそうですか?」
「そうですね、全国の魔法犯罪対策課からそれぞれ3人派出してもらう程度でしょうか。」
「魔法協会のデータバンクは横浜以外にももう1箇所あります。そちらが疎かにならない程度でお願いしますね。」
「それは!・・・つまり。」
「これからそうならないように、交通封鎖の準備に動こうと思っているのですが封鎖を抜けられると厄介ですからね。」
「交通封鎖なら警察の仕事、私が掛け合いましょうか?」
「それにはおよびませんわ。警察の知り合いがあなただけ、という訳でもありませんし。それに、先ほど全国から人を呼ぶとおっしゃっていましたが、そのためには1分1秒も無駄にできないのでは?適材適所という言葉もあります。根回しは、あまりお得意ではないでしょう?」
「わかりました。・・・それでは、リン先生、お気をつけて。」
「ええ、もちろん。あ、そうそう。国防軍の新装備テストの集合が無事に、もう今日ですね、午前中に変更出来たようです。今連絡が入りました。少しはやりやすくなるかと。」
「ありがとうございます。」
「いえいえ、どういたしまして。」
さっさと会計を済ませて車に乗り込む。
束の間の休息
警視庁広域犯罪対策部5課の知り合いに声をかけて交通封鎖についてお願いしている最中に聖一と合流し、交通封鎖のお願いが終わり、桜木町の公園の前で車泊することにした。
「聖一にしてはずいぶん時間がかかったわね、交通管制への介入。」
「ああ、知ってる奴が今日みんな休みでな。」
「あややや。」
「ほんと疲れたぜ。」
「まあ仮眠を取ろう、それで少しは回復するだろ。」
「何時に行動開始する?」
「論文コンペティションは9:00からだから6:30まではのんびりしても問題ないでしょう。」
「3時間半か、束の間の静寂だな。」
「まあまあ。さっ、寝るよー。」
アラームをセットしてシートをリクライニングして眠りについた。
翌朝起きると・・・。
「・・・あれ、聖一が、いない?・・・なんで?」
車載端末のモニターをつけると書き置きがあった。
『おはよう、先に出かける。内閣府直属魔法師部隊の予備隊は6:50にここへ来るように手配した。』
・・・え!?今何時だ!?
時計を見ると6:48だった。
「危ない、寝過ごしてたらえらいこっちゃだった。」
大急ぎで顔をウェットティッシュで拭き、最低限の化粧をし終わる頃、ノックの音がした。
「おはようございます、お久しぶりですね、リン先生。」
「あ、佐藤くんだ。えぇっと・・・全員いるようね。・・・それでどこまで聞いている?」
「熱核攻撃を横浜と京都に仕掛けるらしい、と。」
「それだけ聞いていれば十分ね。対熱核兵器魔法師部隊の全員に直接攻撃を仕掛ける可能性よりは、交通封鎖の中横浜と京都に向かう車を襲撃する可能性が高い。今回の目標は、交通封鎖を始めるまでに敵の工作員を拉致または殺害することよ。途中から四葉の分家、黒羽も動くかもしれないけど鉢合わせしたら協力するように。工作員を見つけ次第私に連絡を頂戴。あとは任せて大丈夫?」
「了解です。」
そういうなり、早速ばらけて行動に移るようだ。
(そういえば黒羽に頼んだのはどうなったんだろう?)
とりあえず指揮を取ってるだろう、亜夜子ちゃんに連絡を取ることにした。
「リン先生ですか?おはようございます。」
「亜夜子ちゃん、それで?本家経由で頼んだお仕事、どうなっているかしら?」
「10人の小規模な集団を5つ、計50人捕らえることができましたが・・・」
「もっといる、と。」
「はい。どうしましょうか?」
「12:00まではそのまま続けて。12:00になったら敵の海からの侵入を監視して、動くようだったら眠らせるなり、拉致するなり、必要なら殺害して構わないわ。これは既に内閣府直属魔法師部隊の予備隊も動いてるから鉢合わせしたら協力するように。」
「了解しました。」
「何かわかったら連絡を頂戴。もちろん四葉本家への報告もお忘れなく。」
「忘れませんよ、わかりました。」
50人、かぁ。少ない。少なすぎる。600人から800人規模で工作員が既に潜入していると、眠る前に調べたらわかった。黒羽も流石に手こずっているようだ。事前に捕らえられるのは200人が限界だろうか。
現在7:10。達也くんが会場に着くまであと40分だ。まだ動くには早い。
(とりあえず会場に向かいつつ、情報収集して7:55になったら、達也くんのところに行くか。)
そう思ったが、朝食がまだだったことを思い出した。というわけで途中コンビニによって朝食と水を買い、お湯を沸かしてささやかな朝食にしたのだった。料理して紅茶を入れたのは人形たちだけど。
まもなく論文コンペ開催
全国高校生魔法学論文コンペティション開幕までもうすぐ、あと一時間になった。
駐車場の車内で朝食を済ませたリンは会場内に侵入した。
そこではちょっとした争いがおきていた。
(おや、あれは一高の風紀委員長、千代田花音。いがみあいの種はエリカちゃんとレオくん、かな?なるほど、エリカちゃんとレオくんは警備に協力したいようね、これは使える。)
「・・・司波くん。この聞き分けのないお嬢さんに、貴方から何か言ってやってくれない?」
「はぁ・・・、俺に一任してもらえるなら引き受けますが。」
「ところがどっこいそうはいかないのよね。みんな、お久しぶり。」
「リン先生だ!なんでここにいるの?」
「達也くんもと深雪さん、エリカちゃんとレオくんもちょっと付き合ってくれないかな?構わないよね?第一高校風紀委員長の千代田花音さん?」
というと五十里の顔をちらりと見たあと苦虫を潰したような顔で
「構いませんが長くかけないでくださいね。」
といい、立ち去った。
4人を引き連れながら向かうはVIP会議室。片手でこの会場の部屋管理システムをクラックして元からそこを使うことになっていたように工作する。
「リン先生、失礼ですがどちらに向かっているのでしょうか?」
「この会場にはVIP会議室というのがあってね、閣僚級の政治家や北山家みたいな経済団体トップレベルの会合に主に使われるのだけど、そこに。国家機密を話すのにロビーのソファー、という訳にはいかないし。はい、ついたわよ。」
扉にアクセスコードを打ち部屋を開けモニターをつけ、4人をそっちのけで情報端末を繋げていると、どうやらエリカちゃんと達也くんは和解できたようだ。
その時扉をノックする音がした。
「深雪さん、申し訳ないのだけれど、開けてくださらない?」
「構いませんが。・・・十文字先輩?なぜこちらへ?」
「十文字家次期当主十文字克人くんね?初めまして、菊水凛と申します。今日は急に呼び足してしまい申し訳ありません。」
「初めまして、十文字克人です。師族会議を通して四葉家から連絡が来た時は何事かと思いました。」
「驚かせてしまったようね。でも緊急事態だったの。使えるものは親でも孫でも、っていうでしょ?」
「はぁ、なるほど。」
「ちょっと待って、なんで十文字会頭がここに?それも四葉家と師族会議経由で?」
「会場を警備しているのは十文字さんですからね、2グループにバラバラ伝えるのはめんdですし。」
「それでその後どうなっていますか?」
「ちょうど説明しようとしていたところよ。
エリカちゃん、レオくん、深雪さん、貴方たちを白昼堂々拉致した理由は・・・置いとくとして、現状についてお話ししようと思います。」
そのままここまでの大筋を話した。
大亜連合が横浜と京都に熱核攻撃を企てているという話は、絶句という形で聴く側が驚きを表すという結果を招いた。
「それでここからは十文字くんも知らない内容になるわ。
熱核攻撃をするということは対熱核兵器魔法師部隊を妨害する部隊がこの横浜に乗り込むということ。こちらは内閣府直属魔法師部隊予備隊と四葉家の分家の黒羽家が動いている。
皆さんに関係があるのは、魔法師の人質を取ることと日本の将来をになう皆さんの殺害を企てる部隊の襲撃。
既に600人から800人規模でゲリラが潜入していてこれにさらに800人以上規模の部隊が上陸し、一部はこの会場に向かうと思われます。
襲撃予想時刻はやや不確定要素があるものの、一高の発表の途中か終わったぐらいか三高の発表が始まったころと思われます。
皆さんにお願いしたいのは、侵入してくる敵を排除し、会場周辺の治安を回復する事です。
国防軍の新装備テストが明後日ある関係でたまたま近くに国防軍が待機しており、昼までには集結するはずです。なのでこの部隊が動くまでが皆さんにお願いしたい事です。」
「リン先生に1つお伺いしたいのですが、そこまでわかっていて論文コンペを中止にしないのは何故でしょうか?」
「理由は4つあります。
1つは何も起こっていないのに、中止を呼びかける理由が作れないこと。
もう1つはこれを機に大亜連合の力を削ぐとともに、日本が各国と同盟を結びやすくするためです。
また、日本に対して熱核攻撃を仕掛けるコストが安くないことをハッキリ示す必要があります。
加えて論文コンペを中止してもしなくてもやる事は同じだという事です。こう言ってはなんですが、論文コンペに来る人の数なんてたかが知れてますからね。」
「まあ要するに見かけた敵を国防軍が来るまで片っ端から倒してればいいって事・・・」
「あんたみたいな単細胞にはそのくらいの理解で十分ね」
「いえ、エリカちゃん、実際やって欲しいのはまさにそれなので、間違ってはいませんよ。敵に先手を取られない事が大事です。」
というとエリカちゃんはぐぬぬといった顔をしている。かわいい。
「リン先生、状況報告ありがとうございます。早期警戒は会場警備隊にも伝達しておきましょう。先生はどう動かれますか?」
「そうですね、真っ先に狙われるであろう港湾管制施設の警戒とあとは黒羽のお手伝いでもしましょうかね〜。一高の発表には間に合うように会場に戻りますよ。」
「そういえば聖一さんはどちらに?」
「一緒に桜木町の駅近くで仮眠を取ったんだけど、起きたら書き置きを残してどっか行っちゃったのよね。まあ探すほどの事ではないし、本気で隠れられたら私にはどうやっても探しようがないし。さて他に質問がなければ解散という事で・・・」
「そうですね、お兄様と十文字先輩は準備もありますし。」
その時手元の端末が危険人物接近警報を知らせた。
「危険人物接近警報?こんな所に?誰かしら。」
端末を操作して写真をモニターに出すと
「おお、カウンセラーの遥ちゃんじゃねーか。」
「遥ちゃん?ああ、そういえば居ましたね、そんな人。」
「うわ、かわいそう。」
「思ってもいない事を言わないの、エリカちゃん。達也くん、彼女の件は私には委任してくれない?」
「ええ、構いません。お願いします。」
「じゃあお願いされ・・・」
「ました!」
「はい??」
一瞬で目の前に現れた人間がいきなり言葉を発すればこんなものだろう。
「あなたの処遇は達也くんから私には委任されました。さて、ミズ・ファントム、今回の件どこまで掴んでいますか?念のために言っておきますが、達也くんと私の関係の話ではないですよ。」
「・・・リン先生が私の名をご存知とは思いませんでした。今回の件とは・・・、大亜連合が横浜に侵攻する話でしょうか?」
「それです。話が早くて助かります。」
「中華街の周公瑾と名乗る男が何やら動いているらしいというのは小耳に挟みましたが・・・。」
「なるほど、周公瑾ですか、調べてたのにすっかり忘れてました。なるほど、周公瑾ねぇ。すこし突いてみますか。」
「えっ?」
「あなた、いい目をしているかもしれませんね。そんな頑張るあなたにちょっとした情報を。
司波達也の正体を知るには、まだ早い。あと、そうですねぇ・・・。何事もなければ今度の正月明け、そうでなければさらに次の正月明けまでには分かるでしょう、と上司にお伝えくださいな。
ただ、貴方もよくご存知の通り、彼はトラブルに愛されてますからね、きっと何事かあるでしょう。貴方にとっても私にとっても頭の痛いことに。
それでは貴方の幸運と良縁、それから今日1日生き残れることを祈ってお別れといたしましょう。また。」
と言って私はスタスタ駐車場に向かった。
(side 遥)
正直な話、混乱の極致だった。
自分は隠業を使って隠れていたはずなのに、いきなり術を解かれたかと思うと突如として現れた。現れた人物は現代魔法界のいしずえといっても過言ではない菊水凛。
しかも開口一番が「ました!」という全くつながりの見えない言葉だ。
訳がわからない。
彼女についた数多くのあだ名の1つに「台風のような人」というのがあったが、こういう事か。
とりあえず、急いでその場を離れつつ、
彼女が「もうすぐ司波達也の正体が明るみになる」と言った意味と「今日1日生き残れることを祈って」と言った意味について考える事にしたのだった。
(side 達也)
今朝叔母上から連絡を受け、リン先生からの警告は聞いていた。
しかし会場に現れるなり拉致同然に自分とエリカたちをVIP会議室に連れて行き、発言の隙を与えない早さで情報をどさっと与える。
そうかと思えば、監視者に気がつくや否や、白紙の委任状を要求し、認めた途端姿が消えるとは思ってもなかった。
十文字会頭ですら気がついていなかったようだが、端末が警報を知らせる前に、想子波に乱れが生じていた。
その時初めて霊子を用いた人避けと、偽装解除の結界が張られていたのに気がついた。どうやらリン先生を中心に、一定距離に結界を張っていたようだ。
本来結界とは、場を起点にかけるもので、距離を起点にかけるものではない。並みの魔法師では自分が動くたびに結界を更新しなければならない。
(一体いつの間に結界を展開したのだろう)
改めてすごい人だと思った達也だった。そこでふと思い当たる。
(ここにエリカたちを呼んだという事は積極的に関わらせる、ということか。)
思わずため息をついた。
コンペ会場のようす
どうも朝からおかしい事続きだ。
朝は師族会議の通信で起こされ、四葉から警告が発せられた。内容も問題である。
このコンペの会場である横浜が戦場になるかもしれないというものだった。しかもソースはあの菊水凛だ。
9校合同警備隊の隊長を務める十文字克人がコンペ前に、行方不明になっていていてひと騒ぎあり、しばらくして何事もなかったかのように現れると全員に防弾チョッキの着用を命じた。
防弾チョッキをきて、警備に出たところで司波さんに会った。
情報収集をすると言ったな(ry
駐車場に向かい、車の前に着いたところで昨晩の千葉警部の話を思い出した。
そう、藤林響子と千葉警部が桜木町で待ち合わせている時刻が8:30だ。現在8:10。多少急ぐ必要がありそうだ。
駅まではもちろんコミューターだ。どうせ会場にもう一度戻るのだ、自分の車で行く意味はない。
そもそもコミューターの料金より自動運転対応の私用車の回送料金のほうが圧倒的に高いし。しかしほかにも理由はある。
この自動運転の発達した時代になっても、居眠り運転は厳禁である。つまり自動運転でも運転手は起きていないといけない。
何が言いたいかというと、私は眠いということだ。
(2人と接触するまで数分だけど寝ますか。)
スヤァ・・・。
駅に着くと千葉警部だけいた。まだ響子さんは来てないようだ。
「昨日ぶり・・・。いえ、早朝ぶりですね、千葉警部さん。藤林さんはまだですか?」
「もうすぐのようです。」
「そうですか。藤林さんが来たら起こしてください。」
「え?あの?」
「すぅ・・・」
「いや、すぅ、じゃなくてですね。・・・はぁ。」
10分くらい経った時、紅茶の香りがした。
「う・・・ふわぁ・・・あや?こうちゃ?ということは・・・あら、響子さん。」
「お目覚めですか?リン先生?」
「はい。・・・この紅茶、美味しいわね。」
「ありがとうございます、私が入れたんです。」
「あら、響子さんが?・・・ふーむ、それなら紅茶の淹れ方について幾つか申し上げたいことが。」
「え!?どこがまずかったのでしょうか?」
「ふふっ。冗談よ。」
「脅かさないでくださいよ、リン先生・・・」
「まあ良いじゃない。それでどう動くのかしら?達也くんと会場警備の十文字君にはもう伝えたわよ?」
「さすがリン先生、打つ手がはやい。それでは周公瑾について少し突こうかと。」
「なるほど、その周りを探れば黒羽さんと内閣府直属の魔法師部隊予備隊の方にお願いしているゲリラ摘発にも少しは役立ちそうですね。」
とりあえず響子の車に乗る。目指すは中華街、ではなくコンペ会場だ。こういう時は現地に行っても仕方ない。
現地ではどうせ聖一が動いているのだから、拠点を張って情報収集するのが得策だ。
「そういえば千葉警部から聞きましたが、私の当初の想像を超えてますね。先生は、潜伏するゲリラはどのくらいの規模とお考えですか?」
「600人から800人かと。たった今入った連絡では、すでに100人程度捕まえましたが正直動き出しの遅さと情報不足で検挙が進んでいません。」
「もう100人も?一体何時から動いてたんですか?」
「黒羽さんは1時くらいから動かれてますよ?」
「その僅かな時間で、しかもこの情報不足で、もう100人もとは・・・。流石は黒羽と言うべきでしょうか?」
「そうですね警部。しかしここからが問題です。注意力不足のおっちょこちょいなゲリラはあらかた捕まえたでしょう。ここから12時までに何処まで検挙出来るかが勝負です。」
「なぜ12時なのでしょうか?」
「敵の行動開始は論文コンペでの第一高校の発表の終了前後10分程度と予想しています。
12:00頃からは各警備隊は交代で昼食の時間になり、警備が手薄になります。我々はそこをフォローする必要があります。」
「なるほと。」
「ところで警部さんの方の配置はどうなっていますか?」
「今、港湾管制塔付近で検問を実施しています。
また、対熱核兵器魔法師部隊は3人でグループを作り所定の配置についていて、その援護に各都道府県から集めた魔法師を配備しています。
我々は、指示があるまでは各自バラバラと警戒に当たるように言ってあります。」
「警部さんはコンペ会場に着いたらどうしますか?」
「避難誘導にあたろうかと。」
「そうですか。では私はしばらく情報収集して12:00位になったらコンペ会場から桜木町駅地下シェルターへの通路に合流する別の通路出口がある高島町付近を警戒しますかね。
響子さんはとりあえずどうしますか?」
「とりあえず一応達也君と会ってそれから命令があるまで先生のお手伝いをしようかと。」
「あら、頼もしいじゃない。で、着いたわね。私の車は・・・ああ、そこの青いやつだから。」
車から飛び降りながら言う。
宣言通り情報収集をする事にする。何を調べるかというと、ゲリラの潜伏箇所と、敵の支援者のうち、横浜に居ない者の現在の所在だ。
敵が日本国内で活動するには必ず協力者が必要なはずだ。
「メアリー、open your eyes.」
常日頃の管理が行き届いたシステムの出番だ。まずは
「キーワード、潜伏場所、横浜、周公瑾。期間は一週間以内。・・・流石にこれに引っかかるとは思わないけど。」
システムが拾った情報はリストアップされ、まばたきすると見逃しそうな勢いで流れる。
「うーん、ノイズだらけだなぁ。引っかかったのも全部捕まってるようだし。あれ、1件だけ捕まってないのがあるわね、一応知らせておきますか。」
そういいながら、情報の海に潜る。すでに捕まった人物、周公瑾の周辺、そして金の流れ。いかなる活動も情報と無縁ではいられない。全ては記録される。
問題は限られた時間で情報の海から必要な情報を消える前に集められるかだ。
もちろん、フリズスキャルヴの検索履歴はリアルタイムで追っているが、真夜ちゃん以外は使っていないようだ。
本格的に潜る前に接近警報が鳴る。車の外にでると
「あら、響子ちゃん。もっと掛かるかと思ったのに。」
「先生が手回ししていたお陰で私のやる事なんて残って無いじゃないですか。」
「そういえばもう10時ね。第四高校の発表までもうすぐね。」
「そういえばそんな時間ですね。」
「じゃあ見ていきましょうか。」
「え?情報収集するんじゃ?」
「思いつく限りのキーでは検索しましたけど、思わしくないので思考の転換に。」
「そうですね。たしか4校のテーマは分子配列の並べかえによる魔法補助具の製作でしたね。」
「原始的ながら、杖作りにも使われていた技術ですからね、それなりに思い入れも少なからずあります。」
そんな事を話しながら会場に入った。ギリギリだったので後ろの方の席になってしまったが問題はない。
魔法学的に優れた特性を示すものは、合成難易度がが極めて高い高分子である事が多い。
つまり、化学的操作では合成経路が分子間相互作用からくる立体障害や反応速度などの理由で合成経路が見つかっていない、または極めて困難である事がままある。
そういった分子の合成に魔法を使用する試みは20世紀初頭からあり、実際イギリスでは杖作りに利用されていた。
今回の四校の発表は、新たな合成経路の発見と、合成に使用する魔法の現代魔法としての定式化についてであった。
実際に魔法具を作り、使用して従来との比較までやるんだから30分という短い時間でよくやるものである。
そんな事を思いながら、物理畑の響子ちゃんに化学畑の端くれとして解説を入れるのだった。
もちろんただ発表を見ていたわけではない。裏で響子ちゃんのネットワークと私のネットワークをつなげ、情報の重み付けをしていた。
当然そんなめんdな作業は自動化してあるが、多少時間がかかる。
発表が終わり駐車場に戻った私達は、統合したネットワークを使って情報収集を再開しようとしていた。
「でね、響子ちゃん。考えたんだけど、ゲリラが発起する場所はある程度予測できるのだから、
その付近全部の街路カメラを1ヶ月前から全部辿って活動が盛んなところを現場部隊に送ろうと思うの。」
「間に合いますかね、それ。」
「間に合わせるのよ。国防軍統合作戦本部のとうちのと、四葉のとあと幾つかのサーバをフル稼働させましょう。」
「統合作戦本部のって、そんなに簡単に使えますかね・・・。」
「丁寧におねがしても無駄でしょうね。」
「はぁ。なんであれを小指の先で落とせるんだろう・・・。」
「あら、交通管制システムよりは遥かに楽よ。」
「それはそれでどうなんでしょうね・・・。」
そんな事言いながらも手は動かしていたお陰で早くもサーバーの準備が整った。
「ところで街路カメラ、どこからアクセスします?」
「この30ヶ所でいいんじゃないかなと。」
そして30分後。
「暇ね。かといって負荷が高くてこれ以上は走らせられないし・・・。」
「諦めてSNSでも適当に漁りましょうか。」
「リミットまで実質あと30分ね。紅茶を飲むよりは建設的か。」
今世紀初頭とは違い、次世代HTTP通信規格や暗号化処理、復号処理のハードウェア化、メモリーの増加、文字コードの統一により、ブラウジングにストレスを感じるのは完全に過去のものになっている。
SNSもかなり高度な検索システムを持つのが当たり前になり、使い方を誤らなければSNSでもそれなりの情報が集まる。
そうは言っても民用サービス、と割り切っていた二人だが、5分後思わぬ収穫を得た。
「武器を運びだす写真?なんでそんなものが?」
「こっちは付近の居酒屋の店主の投稿でテロをやるとかほのめかしていたと。」
「それどこの居酒屋?」
「ええっとここです、山下埠頭。」
「よし!これで勝つる!走らせてるシステムの優先順位を今見つけたところ周辺の優先度が高くなるようにして、日時データを加えて絞り込んで・・・」
「やりましたね、残り時間が大幅に短縮できましたね。」
「そうね。報告によれば現在検挙数は160ほど。一気に200追加するわよ。」
「しかし運が良すぎて逆に疑ってしまいますね。」
「いえ、私の写真の方は近くの捜索隊に頼んでたった今確認が取れたから、かなり確度は高いわ。」
「あと5分、いや3分あれば事足りそうですね。」
「すでに幾つか釣れ始めてるわね。早速現地に流しますか。」
すでに11:41でリミットは近い。
行動は早めに
一応の情報収集が終わったので響子ちゃんと別れ、山内埠頭へと車を走らせる。
埠頭近くに来た時、連絡が入った。どうやら黒羽家の捜索隊と内閣府直属魔法師部隊予備隊は指揮官が協力して動いていたらしい。
コンペ会場を出る時に送ったデータのお陰で、追加で120人検挙出来たらしく、総計250人ほど。地元警察はてんやわんやのようだ。
検問をやっているようだったので車を止めると、稲城警部補がいた。
「こんにちは。なんか巻き込んでしまってすみませんね。」
「いえいえ、事情が事情ですから。」
「検問の成果は?」
「不審車両2台を検挙しましたが、関係があるのは1台だけ、しかも追加情報はなしです。」
「まあ、これからが勝負でしょう。特にトラックの荷台に武器や戦闘員を匿っていないか、確認をお願いしますね。」
「リン先生はどちらに?」
「戦場の下見に。あ、昼ごはんどうしよう、近くになんか店ありましたっけ?」
「近くに美味しいラーメン屋がありますが?」
「場所をおしえてくれる?」
場所をきいてラーメン屋に向かう。飯を食べてる間くらい私抜きでも持つだろう。
店に着くと聖一と鉢合わせした。
「聖一?今朝ぶり。どの辺にいたの?」
「付近の学校への警戒の呼びかけと、中華街付近を探ってた。」
「成果は?」
「だめ。周公瑾が陳祥山と昨夜会っていたというのと、その後周公瑾が中華街の守りを固めたらしい事は分かったが、それ以上は。」
「うーん、まあ仕方ない。話を変えよう。敵の第一手はなんだろう?」
「公共交通機関の爆破とか港湾管制塔や警察に自爆攻撃とかじゃないかな?」
「どれも難易度が高いと思うんだけど。」
「内通者がいれば話は別さ。」
「なるほど。じゃあ「状況は常に最悪を想定してさらに2倍しろ」の法則に従って全部爆破される方向で考えると、どう動くべきかしら?」
「検問を強行突破したり、あからさまに検問を避ける車は予備隊の連中に任せるとして、俺は検問を手伝おうと思う。」
「了解。しかし250人程度とは言え、魔法協会関東支部や、旧神奈川県庁のある住吉町付近に潜伏していたゲリラを検挙できたのは大きかったわね。
地理的にみて激戦区となるのはあのへんだろうし。」
「ところでお前は魔法協会支部の防衛には加わらないのか?」
「この高島町一帯が落ち着いたらね。」
「しかし敵の精鋭部隊が雑魚と戦うであろう義勇軍のさらに後ろに回る可能性はないのか?」
「だからさっさとこのへんの混乱を収拾させるんじゃない。」
「で、凛はどうするんだ?」
「しばらく山内埠頭から横浜駅付近を調べた後、一旦会場に戻って一高の発表を見て、事件発生次第また横浜駅付近に飛んで戻ろうかと」
「なんで飛ぶ?」
「車は使い物にならないだろうから。」
「疲れないか?」
「だからね、今日は久々に箒を使おうと思うの。」
「持ってきてたのか。あ、そういや黒羽への連絡忘れてないだろうな?」
「あ、やばい。」
「おいおい」
ラーメンを食べ終わり、ふたたび聖一と別れ、車を走らせた。黒羽には桜木町駅から野毛山付近の警戒をお願いした。
敵の第一波が魔法協会支部であることは疑いないが、魔法師の誘拐のために論文コンペは必ずターゲットとなる。
そして桜木町駅の避難シェルターを目指すことを想定するなら必ず高島町付近で戦闘が起きる、そう踏んでいた。
高島町付近が敵にとって重要な理由はもうひとつある。
敵はおそらく独立魔装大隊が論文コンペ会場付近にいることを知らない。つまり国防軍への警戒は鶴見と藤沢のみとなる。
藤沢は横浜からはやや遠いが鶴見は横浜の目と鼻の先だ。この部隊の足止めのためにはこの高島町付近に兵力を配置しなければならない。
ところが黒羽の調べではゲリラはほぼ見つけられなかった。魔法協会支部の周辺を優先した結果でもあるが・・・。
もちろんそれがわかっているから千葉警部もこの付近に検問を張っているのだ。
現在12:30。第一高校の発表が終了するまであと3時間。
山内埠頭から横浜駅に向かって走っていた凛だが、端末を通してではなく体の感覚で、ここではないと悟っていた。
「さすがに運河を挟んでここではないか。まあこっちとしてもやりやすくて助かるのだけれど。」
そのまま横浜駅から内陸側を通って高島町へ行くことにした。
かつてのJR東海道線平沼橋駅付近までは違和感を覚えなかったが、旧京浜急行戸部駅近くまで来たところで違和感を覚えた。
(なんかアジア系の外国人が多い・・・?)
戸部には警察署がある。そこの知り合いを頼ることにした。
「すみません、渡瀬さんはいますか?」
「ついさっきお手洗いに行ってたような、あ、戻ってきた。渡瀬さん、お客さんですよ。」
「お客さん?あれ!?リン先生。その節はお世話になりまして。」
「いえいえ。では時間がないので早速。現状についてどう考えていますか?」
「現状・・・といいますと?なにやら魔法犯罪対策課が動いているのは知っています。私も午前中は生活安全課と一緒に外へ出ていましたし。」
「その時なにか違和感は感じませんでしたか?」
「そういえば普段よりアジア系の外国人が多かったような・・・。」
「やはりですか。さて。悪いニュースとさらに悪いニュース、どちらが先に聴きたいですか?」
「そういうのは普通いいニュースと並べるんじゃないですかね。ではさらに悪い方から。」
「横浜と京都に熱核攻撃の危機が迫っています。合わせて魔法協会支部と全国高校生魔法学論文コンペティション会場が敵の標的となっています。」
「なんですって!?・・・ああ、どうりで魔法犯罪対策課が殺気立ってると思った。ここに来た警部さんの怖いこと怖いこと。それであまり聞きたくないのですが悪いニュースは?」
「この戸部警察署から高島町にかけて敵の工作員、ようはゲリラが発起し、交通封鎖や魔法師の誘拐を計画しています。当然市民も巻き添えを喰らう可能性があります。」
「なぜここが・・・ああ、なるほど。国防軍の鶴見駐留部隊の足止めと論文コンペティション会場を襲撃するからですね。桜木町駅へ伸びる避難通路付近も危ない、と。」
「というわけでお願いしますね。」
「一体なにをですか!?」
「事前摘発と市民の避難誘導です。私は避難通路の安全確保をしないといけません。市民は野毛山になるべく誘導してください、状況次第ですが。」
「わかりました。先生もお気をつけて。」
千里を見通す人形
そう言って警察署を出たものの、この付近から動かないと決めた以上、しばらくは暇である。
(適当にそこらを歩きますか。車は・・・仕方ない、東京まで回送しておくか。)
車に戻り、幾つか条件設定式のアラームをセットし、回送を手配して身軽な服装で街に出た。
初めて歩く街。情報端末片手に歩くのは得策ではない。五感を総動員し、気の向くままに歩く。
(こういう五感を使う仕事は私じゃなくて聖一とか有希ちゃんの得意分野よねぇ・・・。
いっその事人形たちも呼び出すか、人形なら街路カメラには引っかからないし。見た目も機械です、で誤魔化せるだろうし。うん、そうしよう。)
カードを使い自宅から人形たちを呼び出す。
「凛?こっちでカードを使って呼び出すなんて久しぶりだけど、何を頼みたいんだ?」
「目になって貰おうかと。」
「なるほど、確かに千里眼向きの仕事だな。どうする、有希?」
「もちろん受けるさ。それでここは横浜の・・・ああ、戸部のあたりか。」
「流石ね。じゃあ早速。突き当たり右と左どっち?」
「左だな。そっちの方が行きたくない。」
こうして人形との楽しい散歩が始まった。
旧東海道線近くまで来た時、魔法の発動を感じた。どうも人払いの結界のようだ。
「有希、近くまで行って見てきて。」
そう言いつつ自分は端末を立ち上げ想子レーダの状態を確認する。すると・・・。
「そりゃまぁ、小指の先で落とせる人もいるだろうけど、いくらなんでもセキュリティが弱くはないだろうか・・・。今度今の仕事にキリがついたら提言しとこうかなぁ・・・。」
「そんな事言ってる場合ではないと思うんだけど。」
「わかってるって。」
とりあえずクラッキングにはクラッキングで対抗しつつ、偵察に行かせた有希と視覚を同調させる。
どうも4人程度のグループらしい。1人が結界を張りつつ監視し、3人が爆発物を設置しているようだ。
キャビネットの幹線路である旧東海道線沿いは当然警察も警戒している。それなのにわざわざご丁寧に爆発物を仕掛ける理由はただ1つ。
魔法による襲撃だ。
この蜂の巣をつついたような騒ぎで、ただでさえ人手不足の魔法犯罪対策課はキャビネット付近の爆発物設置程度では出てこない、そう踏んでいるようだ。
使う魔法は遅延発動の魔法。たとえ爆発物が解体されても遅延発動の魔法とタイミングを合わせて襲撃すれば効率的という寸法なのだろう。
とりあえず有希を呼び戻しつつ、対応を考える。
目の前でやってる連中は捕まえるとして問題はどのくらいの規模でこれをやっているかだ。
「尚也ー、今13:20なんだけど、これどのくらいやられてると思う?」
「そこまで多くはないと思う。それより敵の行動が不自然じゃないか?」
「何が?」
「熱核攻撃を仕掛けるなら当然空戦部隊もいるはず。なんでいないんだ?」
「それは・・・戦闘機を使えないからと、中途半端な魔法師の空戦部隊では立川の空軍の格好の餌になるだけだから、では?」
「それでは対熱核兵器魔法師部隊にはどう対処するんだ?」
「うーん、空中での魔法行使は難しいからむしろ着地する場所をなくす方向で動くんじゃないかな。」
「ゲリラと地上部隊はむしろ監視役として、その魔法師を発見次第エース級戦力を投入する、と考えるべきだろう。」
「あ、有希おかえり。しかし、なるほどね。まあそれなら通信を錯乱させれば事足るから楽でいいんだけど。」
「それより連中かなりたくさんの爆発物を所持しているぞ。すぐに解体に動かないと時間がない。」
「そうねぇ、七草家と黒羽に連絡しておきましょうか。」
「目の前の連中は?」
「超過勤務手当がわりに睡眠を。じゃあ一気にやるわよ。」
「「了解」」
一気に詰め寄り失神呪文を浴びせる。予想どおり一瞬でかたがついた。爆発物は凍結させ、起爆装置は分解。遅延発動魔法も分解してひとまず終わった。
そのまま七草家に連絡をしようとした時・・・。
「凛!上!」
「へ!?」
「上空約1km、無人偵察機。」
「偵察機?ということは敵に、この私が、動いてることが伝わってしまったかな?」
「いや、かろうじて連中がかけた軌道監視衛星カメラ対策の幻惑魔法が残ってるけど、かけ直さないとまずい!」
慌てて透明魔法をかける。さすが有希、1km上空の小型偵察機に気がつくとは。
気を取り直して七草と黒羽に連絡を入れる。また響子ちゃんに無人偵察機の話も併せて流す。
「有希、尚也お疲れ。また後で呼ぶと思うから一旦戻って待機してて。」
「了解。」
カードを向けて自宅にワープさせた。
というわけで、私は空へ舞い上がった。
正直あまり箒で空をとぶのは、得意ではない。だが箒で飛ぶほうが体に負担がかからないためこういう時は重宝する。
早速先程の小型偵察機を発見する。箒を上に向けさらに加速魔法で急上昇し小型の真上に位置取る。魔法観測機器やカメラを避けるためだ。
そのまま100m近く急降下し、小型偵察機とすれ違いざまに分解する。
そのまま横浜を眺める。箒で飛ぶ時は目が乾燥しやすいため、ゴーグルをかけるのが一般的だった。
今回私が身につけているゴーグルは情報端末にもなっているので、AR(仮想現実)で避難経路や交通網、危険物工場、警察、消防、魔法協会の位置などを確認する。
他にも小型偵察機がいる可能性は高いので高高度を飛行していると、今度はさらに小型の光学カメラのみを搭載した無人偵察機を発見した。
(こんな小型機、港まで電波が届くとは思えない。近くに親となる大きな機体があるはず)
しかしざっと見渡しても見つからない。
(ちょっと危険だけど探索魔法をつかうか。)
探索魔法はその原理上、自分が見つけるより一瞬はやく相手に自分が認識される。セキュリティ的に問題がある魔法なのだ。
しかし、超小型偵察機という検索キーがある以上探索魔法を使うのが手っ取り早い。
「せめて有人探査機でありませんように。クワーリル!探索せよ!」
光の筋が飛び出し親機までの直線を照らす。照らした先は地上から1.5kmほど、現在位置から水平方向に500m、垂直方向に400mのところにいるようだ。ここからは雲に隠れて見えない。
見つけたらぐずぐずしている時間はない。目の前の子機を爆破し、最大速度で見つけた偵察機まで箒を走らせすれ違いざまにこれも爆破する。
近くに3機ほど偵察機が見える。P2Pとかでネットワーク復旧されると困るので破壊するべく箒を走らせる。
その後幾つかの親機と子機の集団を見つけた。
なんで対空哨戒に引っかからないのかと思って調べたら、中距離飛行物検知に使われるミリ波(かつてのアナログ放送の帯域付近)吸収素材が使われていた。また赤外線レーザーは空気中のチリで散乱した光をカメラで捉えて避けていた。レーダーにはステルス素材で映らず、軌道監視カメラからは高度的にピンボケで映らない。
さらに魔法的索敵を避ける魔法がかけられているものもある。
これだけの加工、かなりの費用がかかるはずだ。
(ええい、面倒な。測量会社の測量レーザーをセスナから当てれば一発で見つかるのに。)
まあしかし概ね爆破解体が終わった。
現在時刻は2:30。一高の発表まであと30分だ。
敵も偵察機が消されているのは気がついているはずだが追加で展開している様子がないところから察するに、今投入できる機体はもうないのだろう。
内陸に行き過ぎたので、再び戸部へ戻ることにした。
戦いの始まり
飛び立った付近上空にたどり着くも、衛星通信経由での想子レーダーと街路カメラのクラッキングに少し手間取る。
通信速度がどうしても遅いためやむを得ない。それでもどうにか地面に降り立ち、カフェに入ってコーヒーを飲みながら情報収集をする。
飛び立つ前に声を掛けた甲斐あって多少ゲリラを検挙出来ているようだ。
偵察機を破壊しだしたあたりから、国外から日本へのサイバー攻撃が増加しているようだ。既に幾つかの企業で巻き添えを喰らい情報流出が起きている。
どこからどう話が繋がったのか既にIPAがセキュリティ情報を出し、可能ならサービスを休止してネットワークから切断するように呼びかけている。
西暦2030年ごろのいわゆるプログラマー増加政策が珍しく功を奏し、日本のサイバー戦争対策部隊は、質、量ともに大幅な増強に成功した。
これにより周辺国からの慢性的なサイバー攻撃に安定して対処できるようになった。
法案審議当時は1990年代の失策をまた繰り返すのかと散々な言われようだったが、反対勢力を説得するために東奔西走し、最終的に全会一致での可決に持ち込んだ甲斐があったというものだ。
官民合同のサイバー対策部隊は既に昨日から動いていたようだが、数時間前に核攻撃の話を掴んだようだ。
街路カメラや想子レーダーへのクラッキングにも気がついているようで、さっきからネットワークがやたらと騒がしい。
実働部隊の検挙はさらに進んで300人程度の検挙に成功したようだ。まだまだ少ないが検挙しないよりははるかにましである。
一応の情報収集を終え、コミューターで会場に着くとちょうど1校の発表が始まった。
テーマは重力制御魔法式熱核融合炉についてだ。
FLTで他でもない司波達也によって実用化されたループキャストを応用、刻一刻と変化し変数定義が困難な状況を微小時間に分解し魔法を断続的に行使する。
かける魔法は分子間の結合を弱めるものと重力を制御する魔法。
距離の2条に反比例して増大するクーロン力を弱め、また重力を制御することで反応場を設定し、原子が衝突する事を可能にする。ループキャストがあってこその魔法だ。
(私は積分してるみたいで嫌いなんだけど。)
ループキャストのやってることは、小学校で誰もが習ったであろう、円の面積を求める方法に近いものがある。円をどこまでも細い短冊形に切って長方形に近似したあれだ。
(やっぱり数学嫌い。)
学生の発表なのであまり質問を投げかける人はいないが、私は質問を投げることにした。だって私物理苦手だし。聖一がいれば聞くんだけど。
ちょうど司会が質疑応答に入るとアナウンスしたので手を上げてみた。マイクが回ってくる。
「初めましてのかたははじめまして、菊水凛と申します。断続的熱核融合炉にループキャストを利用するのは面白いと思いました。質問があります。
控えめに言っても物理は苦手なので頓珍漢なことを言っていないといいのですが。
加速魔法などで明らかなように魔法的な何らかのエネルギーは物理的なエネルギーに変換されることは余剰次元定理を持ち出すまでもなく明らかですが、
その逆が起こることによりエネルギー収量が減少することはありませんか?
例えばFAE理論、後発事象可変理論、Free After Execution theory、まあどれでもいいですけど。とにかくそれでは、魔法発動直後ごく僅かな時間物理空間にある種のゆらぎが生じ、その間の魔法発動は通常よりはるかに少ない負荷で魔法が発動できることを利用しています。
つまりその間物理法則にゆらぎが生じるわけですね。このとき核融合反応の反応場がそのゆらぎのただ中にいるということになると思うのですが、
エネルギーが逆に別の次元へ逃げる可能性はありませんか?
ループキャストを利用する以上、反応の効率化とループ時間の短縮は同義だと思うのですがそうすればするほどエネルギーが逃げやすくなりはしませんか?」
「術式調整を担当した司波です。エネルギーが逃げ出す可能性はありますが、
FAE理論の示す物理法則の拘束から開放される時間はループ周期と比べて極めて短く、
また生成したエネルギーの無視できない量が流出するとは考えにくいので懸念は当たらないと考えます。
ところでリン先生、FAE理論は日米の極秘研究だったものでまだ機密指定は解除されていないと思うのですがここで言って大丈夫ですか?」
「あややや・・・。」
(やっば、忘れてた。)
ちょっと疲れてるなぁ・・・、と内心焦りつつ。
「まあ、私を捕まえられるものなら捕まえればいいんですよ、無理でしょうから。もちろん、あなたや周辺の安全も私が保証します。もっとも今日生き残れたら、ですが。」
そこまでいって質問を終えた。手元の端末がさっきから警告を出し続けてる。山下埠頭の港湾管制ビルが襲撃されたようだ。
残念ながら防ぎきれなかったらしい。現在時間は15:33。敵の邪魔が入らなくって本当に良かった。
背伸びなんかをしていたら三高の吉祥寺真紅郎が壇上に見えた。この後の発表は基本コード魔法の重複限界だったろうか。
化学屋としては興味のある発表なのだが、残念ながら見られそうにない。
エリカちゃんたちが来たのでお別れと警戒の言葉を残し会場を去る。
会場から出ると同時に殺気を感じたので、透明魔法を自身にかける。すぐに後ろで戦闘が始まるが私には他の仕事がある。
(まあ、彼らならこの程度の集団、大したことはないでしょう)
得た情報は自動的に四葉家に流される。黒羽家の情報と合わせて、師族会議、国防軍と警察に流されている。
すでに警察は市民の避難誘導にあたり、101旅団は会場付近の防衛に動き始めているだろう。
政府は山下埠頭港湾管制ビル襲撃の5分後、15:35の時点で非常事態宣言を出している。
四葉家を経由してヘリコプター含む一切の飛行物体の飛行禁止が出ているのでマスコミの報道ヘリや無人撮影機は飛んでいない。
避難誘導
グズグズしている暇はない。最大速度で付近の幹線道路に向かう。
敵のロケット弾攻撃を防ぎつつ、侵入した敵に攻撃しつつ被害が出た道路を直す。正直私一人では手が回っていないが、やらないよかましである。
横浜駅付近に来た。
キャビネットは横浜を起点に東京都心方面と八王子方面に分岐している。ここを守らないと市民の脱出に支障が出る。
横浜付近は片側5線の線路になっており、1つがやられても他の線路に迂回するように設計されている。
今回も事前の摘発により想像ほど被害は出ていないがそれでも幾つかに損傷が見られる。
目の前で破壊工作をやっている方にはスヤァしてもらいつつ、修復する。
とても一人では捌き切れないので焼け石に水とはおもいつつ人形たちを呼び出す。ロケット弾と線路の補修位なら人形に任せられる。
「有希、尚也、かなちゃん。状況は見ての通り。ロケット弾への対処と線路の修復を手伝って。」
「わかった」
「任せろ」
「了解。ああっ!このロケット弾の3/4の量でこの横浜を機能不全にできるのにっ!もったいない・・・。」
「かなちゃん、発言が物騒」
「ごめんごめん」
どっとキャビネットが押し寄せる。桜木町付近からの避難客のようだ。事前の手配が功を奏したようでなによりだ。
その上空をひらひらとあっちこっちに飛び回りつつロケット弾を跳ね返しつつ、修復しつつ、見かけた工作員を眠らせつつしていると15:45になった。
「凛、そろそろ高浜町の方のもう1つの避難シェルターへの入り口に向かわないと。」
「そうだったわね、急いでリュックサックの中に入って!」
「はーい」
大急ぎで人形達をしまいつつ、保険で幾つかの結界を張り、箒を走らせて避難シェルター入り口へと向かう。
高浜町のシェルター入り口上空に着くと既に敵の手に落ちていた。
「間に合わなかったか。みんな、一斉突撃をかけるよ!」
「「了解!」」
一気に急降下爆撃を行う。もちろん透明のままでだ。
爆撃しては上空に飛び上がりというのを繰り返しつつ、追加の敵が来ないように認識障害結界を張る。
本当は通信妨害もしたかったが、万が一まだ逃げ遅れた市民がいた場合まずいのでかけるわけにはいかない。
120人ほどとかなりの大人数だったが、透明になりつつ急降下爆撃をした事で奇襲に成功したこと、また幸いなことに敵の魔法師が数人程度だった事もありほとんどを眠らせる事に成功した。
目に見えてる連中は全員眠らせたが、避難シェルターに入っていった敵も20人前後いたようだ。
認識障害結界を張り直し、通路入り口に鳴子の魔法をかけ、通路に入っていった敵を追いかけた。
避難通路は合流地点まででも結構長い。また陸上戦力に追われる事を想定して直線ではないため、地上を歩くより長い距離を歩く必要がある。
(箒はこの狭さでは私には無理ね。これなら地上から先回りした方が、良かった気がする)
そうは言っても今更だ。前方から戦闘の音がする。これなら前後から挟み撃ちに出来そうだ。もちろん透明魔法なんてきってある。
「みんな、一気にやるよ!」
「分かってる!」
敵が私に気がついて私より早く銃の引き金を引くが、直後私の魔法で失神。飛んだ球はカナちゃんが爆破して解体した。
向こうで戦っている一高の生徒が見えた。人数は3人。20人を相手にするには少し少なすぎる。
(そもそも私は個人戦なんて苦手なんだから、わざわざ苦手で面倒な事する必要はないじゃない。)
面倒になって(キレたとも言う)人形達に指示を出そうとした時、有希が
「範囲攻撃だろ、分かってる、早くしろ」
と言い出した。私の人形が優秀すぎる。
というわけで防御を人形に任せ、攻撃に専念する。
1つ目の魔法は冷却魔法。敵魔法師の魔法を領域干渉で無効にしつつ、味方に魔法行使を知らせ、敵の体温を急速に奪い行動を鈍くする。
2つ目の魔法は重力制御魔法、敵が感じる重力を増大させる。
3つ目の魔法は遮光の結界。敵を覆うようにかける。同時に敵は周囲が暗くなったように感じる。
4つ目の魔法は閃光魔法、ある種の催眠術だ。遮光の結界を張ったのは術者への被害を防ぐためでもあるが、催眠状態になりやすくする効果もある。
それでも何人かは閃光を免れたらしいがこれなら対処は容易だ。私と人形達の失神魔法と一高の生徒が放った攻撃ですぐに鎮圧された。時計を見ると15:55だった。
「失礼ですが、第一高校の中条あずさ生徒会長ですか?」
「え!?あ、はい、中条です。あなたは確か・・・」
「はい、先ほど会場で質問をしていた菊水凛と申します。
でですね、高浜町から伸びる地下通路は侵入者避けと認識障害結界が貼ってあるのでこれ以上の侵入者は来ないと思うので、とりあえずそこは安心してください。
万が一来た場合は鳴子の音が響きわたる魔法をかけているので先手を取られる事もありません。
ただし、地上は敵の戦車が走っており、この避難通路は一部その荷重に耐えられない可能性があるので予断を許さない状況です。
そこで私が最前線に立って、皆様が安全に避難できるよう、シェルターまで行こうと思うのですが構いませんか?」
「は、はい!ご迷惑でなければ!」
「では。ええっと確か服部刑部元生徒会副会長と第一高校剣術部の桐原さんとレンジゼロの十三束くん、でしたっけ、間違っていないといいんですが。」
「間違っていませんが、なんで私たちの名前を・・・そんな場合ではないですね、なんでしょう?」
「私が一番前にいくので、服部さんは後ろをお願いできますか?私とあなたでは魔法が干渉するかもしれないですし。」
「わかりました。それでは先を急ぎましょう。」
「では生徒会長さん?」
「はい。」
後ろの避難する人へのアナウンスを任せ、歩き出した。
人形たちは先に行かせてある。視覚共有しつつ先に進む。
人形たちが開けた空間に出た。避難シェルターの入り口である。右手には階段がある。これは駅から直接シェルター入り口に行ける階段だ。
人形たちには階段を上がって外を警戒するように伝える。
人形たちに遅れること5分、16:03、ようやく避難シェルター入り口が見えた。しかし・・・。
「中条あずさ生徒会長!走ってドアを開けてもらうよう交渉を!地上を戦車が走っていてこっちに向かってるから、崩落の危険があります!私の魔法で時間稼ぎするから早く!プロテゴ・マキシマ!最大限の守護を!」
視覚共有で人形の目を借りていた私は、地上の戦車をいち早く察知し警告を発し、同時に杖で魔法をかけた。
落ち着いてCADを取り出し、加重軽減と硬化魔法をかける。近くで対物障壁が展開されようとした時真上を戦車が通った。
戦車と言っても直立機動戦車、尋常ではない重量だ。しかも1台や2台ではない。
ドアを無事に開けてもらえたらしく一斉に逃げ込むが、途中で魔法が耐えきれず、天井が崩れ出す。
(ちっ、加重軽減してもこの速さとかどんだけ重いんだ)
そこに新たな魔法が発動する。落下し砕けた天井がアーチ状になる。
(この魔法は確か物体をポリゴンとして認識することで魔法をかけるものだったような。でもそれでは数秒しか持たない!)
「アグアメンティ!水よ!ニブルヘイム!叫喚地獄!」
崩れた瓦礫を水に浸し、直ちに凍結させる。一体となり認識しやすくなったそれに、硬化魔法を展開する。
なんとか全員が逃げ込めたところで、追加で戦車が通った事により天井が今度こそ崩落する。天井を爆破して吹き飛ばしながら箒で飛び上がり難を逃れる。
P2P通信で中条あずさ生徒会長に連絡を取るとどうやら怪我人一人いないようだ。
地上にいた警官へ、シェルターの現状を伝えたところで時刻を確認すると16:07だった。
人形たちと合流し高浜町へ向かう。
そうしようとした時再び直立機動戦車が向かってくる。どうもまた戻ってきたらしい。
(うーん、どうしよう)
というのも、一高の他のメンバーが響子ちゃんと一緒へここに向かっていて、もうすぐつきそうなのだ。
かといって自分で、ここで戦う時間はない。早く他の場所の応援に行かなければならない。
だから精神干渉系の魔法を使う事にした。ただし短時間で大規模に精神干渉系魔法を使うので大きな意識改変はできない。だから付近の戦車を一高の地上組に、けしかけることにした。
そして箒を取り出し高浜町へ今度こそ向かった。
(まあ、響子ちゃんに深雪ちゃんもいるしどうとでもなるでしょ。)
高島町敵掃討作戦
16:11、高島町付近に着くとそこは地獄絵図・・・ではなかった。
多少逃げ遅れた市民もいるようだが、警察が誘導に当たっている。
(さっすが、渡瀬ちゃん、優秀。)
残って荒らしまわってるゲリラを片っ端から眠らせていくことにした。
しかし戦い始めて10分もせず戦車が北に向かって行くのが見えた。 (確かこの敵の掃討には独立魔装大隊が割り当てられてたよね?彼らは今・・・まだ会場付近!?いくら飛行魔法が使える部隊といっても、全員が使いこなせてるはずもないし、すると間に合わない!) 敵の目的は明らかに瑞穂埠頭に向かい人質を取ること。山内埠頭を経由する最短ルートで行かれては独立魔装大隊が追いつけない。
ひとまず安全なところに退避し、端末を立ち上げ、敵の交通ナビゲーションシステムにクラッキングを試みる。幸い1分かからずクラックに成功した。山内埠頭を経由するルートが通行不能であるという情報を偽のライブ映像とともに載せる。同時並行で響子ちゃんに情報を流す。
戦車が左折し、横浜駅の方に向かっていく。どうやら成功したらしい。
ホッと一息ついた。しかしそれは誤った判断だった。
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
追憶編
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転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
来訪者編〈上〉
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転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
来訪者編〈中〉
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転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
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来訪者編〈下〉
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ダブルセブン編
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転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
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スティープルチェース編
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転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
古都内乱編〈上〉
傀儡式鬼と幻獣への対処
交通管制システムを遠隔操作ロボットでクラック可能かという実験のために、まずこれまで通りクラックし、それから実験をしていたら夜が明けた。結果は失敗だったが。
(うーん、あれ、地味に高いんだよなぁ、どうやって回収しよう・・・。運悪く京都に行っちゃうし・・・。)
そう、遠隔操作ロボットを回収しようと思っていたらどういうわけか偶然京都市内まで、載せていたコミューターが行ってしまっていた。名古屋に行った時点で呼び戻すべきだったか。
いい案が浮かばないので、紅茶を入れて飲みつつ情報端末に目をやる。
「そう言えば達也、京都のKKホテルで、これから嵐山に向かうのか。ちょうどいいや。」
クラックついでに達也からの手配には問題のロボットが乗ったコミューターを向かわせるように設定する。
シャワーを浴びて上がったらどうやらコミューターに乗り込んでいるようだ。マイクをオンにすると会話が聞こえてきた。
「司波、さっきの幻獣だが、俺たちが昨日遭遇した『傀儡式鬼』とはまた違うものなのか?」
「傀儡式鬼とはまた耳慣れない呼び方だな。ゴーレムという名称が一般的だ。この名前なら、違いが分かるんじゃないか」
「一条さん、お兄様、口を挿んですみません。お兄様、私もゴーレムについては名前しか知らないも同然です。どういうものか簡単に教えていただけませんでしょうか」
(深雪がゴーレムを知らない・・・?・・・ああ、一条くんのためか。)
「ゴーレムは幾つものパーツを連結して生物、あるいは伝説上の怪物を模した人形に行動パターンをプログラムした独立情報体を埋め込んで、収束系魔法で各パーツの相対位置を連続的に変えることで模った生物を再現する魔法的なロボットだ。
例えば石材で巨人のゴーレムを作るとする。そのゴーレムは一見、関節もない硬い石の塊が人間のように動き出したかの如く見える。
だが実際には関節にあたる部分は繋がっていない。硬化魔法と同じ原理で、相対位置を固定しているだけ、要は身体の各パーツを積み上げているだけだ。
ゴーレムにはその材料となっている実体物がある。木材のような有機物の場合もあれば、石材のような無機質の場合も、水のような不定形物の場合もある。
しかし、実体を持たず力場でそれがあるように見せかけている化成体や幻獣とは、実態があるという点で決定的に異なる。
ゴーレムを動かすためには、動作パターンをプログラムした独立情報体を埋め込む必要がある」
「えっと……要するに、幻獣や化成体とゴーレムの違いは、実態があるか無いかなのね?」
そろそろ面倒だと思ったのか、真由美が達也の説明を本当に一言でまとめた。
「今の話を聞くと、実体がある分、ゴーレムの方が対処しやすく思えるな」
「化成体にしろ、幻獣にしろ、わざわざ生物の形を与えるという余計な手間を挿んでいる。その点で、魔法の使い方としては非効率なものだ。
核となる呪物を使っていないなら、狭い範囲に魔法力を集中した領域干渉で消し去れる。呪物で虚像を強化している場合は、その核を破壊すればいい。
あるいは単純に虚像を形作る力場を破壊してもいい。物理的に作用する力場なら、物理的な作用で破壊可能だ」
(その認識では不十分よ、達也。)
即座にロボットのカメラとマイクを有効にし、話しかける。
「ところがそうでもないわよ、達也。」
カメラを見ると一条くんと深雪が驚いてくれたようで固まっている。が。
「達也、ちょっとストップ、それ壊さないで。それ地味に高いんだから!ちゃんと回収しといてね。」
10数万する機械を回収できなかったらちょっとへこむ。
そんなことを思っていたら
「リン先生、この会話を聞くためにこんな凝った物を仕掛けてるんですか?」
「そんなわけないじゃない。」
とんだ勘違いをされた。
「で話を戻すわよ。1996年にアリス・マーガトロイドという当時16歳のイギリスの魔女が『影法師の呪い』というのを開発したのよ。」
「はぁ。」
「達也は知ってると思うけど彼女は人形遣いでね。当時の情勢下で彼女は人形を増やして物量作戦に出て、身を護る必要があった。しかし1つ1つ人形を作ってたらやってられないということで使っていた『双子の呪い』にあった欠陥を回避するために開発した魔法なのよ。
お察しのとおり、これは元となる1つの人形を複製する魔法なんだけれども、これは傀儡の核を複製したそれぞれが持っているのよ。
そのおかげで、相手に視認されないところへ人形を1つ隠しておけば、術者の魔力供給がある限りほぼ無限に存在し続けられるというチート染みた代物だったわけ。
さて一条くん、これにあなたならどう対抗する?」
「ぇえ!?ええっと・・・。物理的な力場に干渉してるけれど、すべてを視認できないから同時には破壊不可能で核も同じ・・・うーん。」
「お手上げかしら。そう言えば以前深雪に出題しっぱなしだったわね、ちゃんと『お兄さま』に聞かないで答えは出たかしら?」
「ええっと、対象数が同時照準可能なら視認できる数すべてを破壊した時に流れ込む魔法式を解析すれば視認できていない人形を認識できると思います。しかし誰もが魔法式を解析できるわけではないという点と、同時破壊が必要ということに変わりがないので・・・。これではダメ、ですね・・・。
いや、修復のための術式が動作するためには何らかの印が必要なはずです、その印を壊せば修復されなくなるのでは?」
「良いところを突いたわね。開発当時彼女が、親友である私にその魔法を見せた時に、そこを突いてクラックして見せたわ。
それで彼女と共に術式を修正して、核そのものを印として使う事にしたの。核を壊す間に修復が始まるという寸法ね。」
「術式解体をぶつけるのではダメなのでしょうか?」
「一瞬核付近の想子が乱れるだけで無意味でしょうね。達也、答えを言って良いわよ。」
「核周辺の想子をなくせば印が機能しなくなると思います。」
「そうね、それが1つ目の方法。何らかの方法で想子を離し印を無効化するのは有効よ。
もう1つの方法は、修復のために流れ込む術式を遮断する、もしくは改竄すること。つまり術式解体より大きな範囲で想子を荒らしつつ、物理的に破壊すればいいわ。」
「どちらも無理難題に聞こえるのですが。」
「そうねぇ、作った本人が言うのも何だけど現代魔法は情報と認識にこだわりすぎた結果、気や流れの操作が苦手だものね。
古式魔法なら前者は結界を投げつけるなり、想子を吸引する擬似生命体をでっち上げるなりすればいいし、後者はやはり結界を張ったり想子を乱す効果がある香料や粉末の弾幕を張ればいいだけだからね。」
「すみません、領域干渉でダメな理由は何でしょうか?」
「一条くんはそもそも領域干渉に対する理解が欠如しているようね。
領域干渉とは、つまるところ想子の支配権争い。影法師の呪いで生み出される核は霊子の集合。加えて存在する想子は術者の影響下にある。強く純粋な想い。
幻想が集う核と術者の影響下にある想子が生み出す支配力に打ち勝つ領域干渉なんて私でも作れないわよ。消耗戦に持ち込んでも相手より自分の消耗が早いから成立しないし。」
「なるほど。しかしでは何故精霊魔法は領域干渉で防げるのでしょうか?」
「精霊そのものを相手にしないから。」
突拍子もない話に、領域干渉で精霊そのものはほとんど影響を受けないという基本的な話を忘れてしまったらしい。
「あっ・・・。なるほど、ありがとうございました。」
「現代魔法師は速さばかりに目が行きがちだけど、こういう技巧を凝らした魔法の前にきちんと対処出来なければだめよ、一条くん、深雪。また、古式魔法に関して安易に結論を出さないこと、達也。」
「考え不足でした。」
「解ればよろしい。そろそろ目的地だけど、頼むからそれ回収してね、電池抜けば動かないから。」
「わかりました。」
言ったそばから電池が抜かれた。まあちゃんと持って帰って来てくれるだろう、多分。
徹夜してたから当たり前だが眠くなってきた。寝るか。
転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
古都内乱編〈下〉
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転生した二人は魔術とITを融合させる(Two people who transmigrated make magic and IT fused)
魔法科高校の劣等生
四葉継承編
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