本来の目的=拠点作成

一番初めの骨の海は、杖の一振りで使わない通路に押し込めてきれいにする。
そして骨の海と仮拠点の間に、本来ここに来た目的である拠点を作る。

「特に広さとか決めてなかったが、どの程度にするんだ?」
「そうねー、6畳の和室と押入れ、温泉に6畳の寝室、18畳の研究室2つに5畳の保管庫、6畳のコンピューター室、6畳の休憩場所が作れればいいんじゃない?」
「結構広いんだな・・・。じゃあ平面図は・・・」
「ってなんでそんなサラサラと平面図を書けるのよ。」
「基本的に左右対称にしとけばいいだろ。特に制約ないんだから簡単だろ。」
「そういえば神社も欲しいわねぇ。」
「神社?どこから分社するんだ?それに神主は誰だよ。」
「神主は聖一でいいじゃん。神様は信じればボウフラみたいに湧いてくるわよ、きっと。」
「断る!だいいち神様の扱いが酷い。仮にも神職の家系に転生した身だろうが?」
「まあ、いいっか。神社は後々ということで諦めるとして、じゃあお昼までにさっさと掘りますか。」

早速穴掘り呪文と爆破呪文、切断呪文、それから持ってきたメジャーを駆使して部屋を掘り抜く。
壁の厚さはそれぞれ3メートル程度にして、強化呪文やら保護呪文やら耐火耐水呪文やらをかける。

現在13:00。
部屋作成も残すは温泉のみだ。

現在は2人揃って昼食だ。
人形を呼び出したら立派な食事にありつけた。
どうやら尚也は、しもべ妖精ともう仲良くなったらしい。
作って1ヶ月も経たないのに、恐るべき成長ぶりだ。

基本的に仲睦まじいカップルとしてみられる聖一と凛だが、意見対立が生じることは無論ある。
昼食の後、温泉作りにとりかかったわけだが、意見対立が生じた。
どういうことかというと、まず聖一は、浴場は男女分けるべきと主張した。これに対し凛は、更衣室はともかく、浴場は同じでいいと主張した。
聖一も面倒くさがりな性格だが、それとモラルとを天秤にかければ後者に傾くのに対し、凛はさらに面倒くさがりだった。
およそプログラマーなんて面倒くさがりでなければ務まらないのだから当たり前と言えるかもしれないが。

もちろん二人とも入るのは自分達だけだろう、とは分かっていた。

30分近くも言い争った末、露天風呂のみを混浴にすることで決着した。え?その間に作れたろうって?黙らっしゃい!

温泉の形作りはすぐ終わったが、肝心の温水の確保はなかなかうまくいかなかった。
ここはイギリスで、日本と違い、掘れば温泉が湧き出るわけではないからだ。
当面は地下水を汲み上げ浄化して加温することで妥協することになった。

家具や最低限の実験器具、薬品、台所用品、パソコンなどをさくっと設置しソファーでココアを飲みながらくつろぐ。

「なんとか日が暮れる前におわったな。」
「うん、途中脱線したけどね、よかったよかった。」
「もう終わったからいいけど、もうすこし自分が女だっていう自覚持てよな、全く。」
「はいはい。・・・なんだか眠くなっちゃった、お昼寝していい?」
「だめだ。」
「どうして?」
「いくら今日が休日でも夕食の席にいないのはまずいだろうが。寮監ならまだ誤魔化せても校長までは誤魔化せなくなるぞ。」
「わかったよ。あ、そういえば昨晩補修したところ、型を外しとかないと。」
「あ、そうだった、忘れてた。」
「今度出口までトロッコとか、そういう何かをひきたいね。徒歩30分は流石にいただけない。」
「そのためには測量しないといけないな。」
「魔法界にもGPSのようなシステムが必要よね。Local Positionong Systemみたいな名前でどうだろう?」
「いや、今回に限れば2つで一対の機械を作ってお互いの方向を指し示すだけでなんとかなるんじゃないか?」
「なるほど、四方位呪文があるのだから、その基準対象を変更すればなんとかなりそうね。」
「しかし無線通信がこうもことごとく潰されるというのは厄介だよな、ホグワーツの保護呪文も。」
「早く突き止めたいよね。」