横浜の事変の幕開けはあまりに突然で

調べ始めて5分たたず、横浜中華街の周公瑾の暗躍が確認できた。その後が問題だった。

どうやら大亜連合は横浜と京都に熱核攻撃をするらしい。

最初にこの情報を掴んだのは調べ始めて30分経った頃だった。陳祥山が横浜を攻撃するらしいことがわかりその背景を調べていたのだが流石に驚いた。
どのくらい驚いたかというと、思わず倒立して部屋を歩いているところを聖一に見つかり呆れられるくらいには。

「なに、熱核攻撃を横浜と京都にだと!?」
「ええ、そうみたい。横浜への陳祥山らの部隊とは別に同じく横浜から京都へ魔法師を含む部隊が向かう予定みたい。」
「敵の第一上陸目的は対熱核兵器魔法師部隊の妨害か。」

21世紀前半にはイージスシステムやPACによるミサイル防衛システムが開発され宣伝されたが、実際には見つけても撃ち落とせるかは運次第、と言う程度のものであったことは割と知られている話だ。それは21世紀末になってもミサイル側の対ミサイル迎撃システム対策の影響もありさして変わっていない。
こうした事情と、そもそも魔法師が知られるようになった原因が1999年の熱核攻撃阻止であったことを背景に、国として成立しているところならばどこにも対熱核兵器魔法師部隊が規模の差こそあれ存在する。

「そのようね、加えて魔法協会データバンクの襲撃と人質の確保も狙っているようね。しかしなんで横浜からだけ侵入するのかしら、大阪なり神戸からも上陸したほうが効率はいいだろうに。」
「大阪神戸では周公瑾の支援が受けられないから事前工作がバレることを警戒しているんだろう。それにしても大亜連合は正気か?熱核攻撃は1999年以来のタブー。もし行えば他の国も黙ってはいないだろうに。」
「しかもおきまりの日本弱化を狙ったUSENとの同盟関係を結んだらしいのだけど、USENは熱核攻撃に気がついていないわ、どうやら出し抜いたようね。」
「USENの大亜連合交渉官ってのはそんなに間抜けで務まるようになったのか、知らなかったな。まあそれはさておき、どう対処する?」
「幸いな事に京都攻撃部隊の行動起点は横浜。京都へは横浜の外への交通封鎖で対応出来るわ。問題は横浜ね。」
「まあここで議論いる暇はないか。」
「そうね、聖一。」
「分かってる。」

そう、今は行動する時だった。まずは今回の件で既に動いている独立魔装大隊の動きを確認するのと警察の魔法犯罪対策課の動きを確認するのが先決だ。
1時間かけて調べた結果、辛うじて独立魔装大隊が誰かを人質にとるため、何らかの行動するかもしれないという予測を立てている事が分かった。しかしそんな事ではとても対処しきれない。

そこに電話が入った。

「リン、もうすぐ首相官邸につく。どこまで情報を伝える?全部話してもいいとは思うが?」
「ええ。ただ現地対応はなんとかするから外交面に専念してと伝えて。あと、11/2の国防軍の新装備テストの集合を31日午前中に完了するようにと伝言して。それから、内閣府直属の魔法師部隊予備隊の指揮権を私に、と。あと聖一は今のうちに連絡要員をよんで交渉が終わり次第」
「ああ、分かってる。さて着いた、切るぞ?」
「了解!」

これで政府としての対応はとれるだろう。

とにかく事変発生時の交通封鎖、特に京都方面と、市民の誘導のための警官の配置、外敵排除のための国防軍、港湾管制塔が機能しなくなる事を想定して武装警察への連絡。やる事は山積みだ。まずは国防軍だろうか。

「明後日のイベント、明日にずらすのは大変そうね、真夜ちゃんに手伝ってもらいましょう。」

とりあえず四葉本宅へ向かう事にした。